再現性の高い組織は、小さな幸せグループの温床になりうる

これら小さな幸せグループの抵抗は、全世界の企業に共通する問題であろう。日本企業の場合は、日本社会固有の強さ、すなわち「再現性」と裏腹の関係にあると考えられる。これまでの比較的安定した雇用環境の中で仲間意識が醸成され、昨日、今日、明日が変化もなく続いていくことに喜びを感じる社内環境ができやすいのではないかと思う。

日本再生の議論は聞き飽きるほどにされているが、そのためには創造性や独創性が重要であると訴える人が少なくない。それは間違いではないが、日本人には創造性や独創性がないと思うのであれば間違いだ。創造的、独創的な個人はたくさんいる。それを生かせない企業の行動様式が問題なのだ。

日本の企業や組織は、「昨日できたことが、今日もでき、明日もほぼ確実に同じことができる」という再現性に優れている。東海道新幹線が遅れることはまずない。

その正確性と確実性にJR東海は美意識を持っているはずだ。他のJR各社も同じだ。旧国鉄から受け継いだ「定時運行」の価値観だ。その価値観は、大部分の伝統的な日本企業にある。

再現性を保つためには、単調な仕事を常にミスなくこなす必要があり、したがって組織文化は連続性、すなわち現状維持を大事にする。「昨日までできたことをやめ、今日からはこれまでやったことのないことをやる」という発想や行動が出にくいことは明らかだ。

組織デザインの試みは破壊が目的ではない。外的変化に適応するために、組織行動の変革を促す仕組みをつくることである。新しい事業環境がこれまでよりも一段と進んだ行動を要求するのは、自然な成り行きである。より高度な能力を持ち、顧客の要望に適宜応えることを要求される。しかも、これまで以上に速いスピードで陳腐化し、次のステップへの変革をしていかなければいけない。