おそらく、医師の過重労働という点では、ヨーロッパの病院よりもひどかったかもしれないが、新型コロナ感染者のすべてがICU(集中治療室)に入院するなどの重症者ばかりではないということから考えれば、とりあえず入院させて隔離したりすることができたことが、ピークアウトの大きな要因ではなかろうか。

 結核の感染病床でも医師の高度な治療が常に必要なわけではない。隔離して感染を防ぎ、重症化しそうな時にすぐに介入することができることが重要であろう。

ドイツはなぜ
死亡者が増えていないのか

 さてここで、おなじEUの国として似通った医療体制を持つイタリアとドイツを比べてみよう。ほぼ同じようなトレンドで片方が医療崩壊、片方がピークアウトという対照的な動きをしたイタリアと韓国と違い、イタリアとドイツは感染者数が増える時期が異なっており、ドイツでさえ現状ではピークアウトしていない。

 イタリアとドイツの「決定的な差」が何になるかといえば、やはり病床数と医療のレベルということになろう。ドイツに比して、イタリアは病床数が半分以下である。

 そして付随的な対GDP比当たりの医療費も異なる。イタリアは8.8%に対し、ドイツは11.2%である。この費用の差から考えれば、医師などの待遇や病院の設備という点で、ドイツはイタリアよりすぐれていると考えられる。

 病床の利用率や平均在院日数にはあまり差はないので、病床の余力としても大きな差がないと思われ、正確にいえば、このような急性期の治療を行うための「急性期病床数の差」ということになるが、ここにおいてもドイツとイタリアの病床数差は大きい。

 つまり、病床率の差が、医療崩壊の定義となる「患者が医学的に必要な措置が生じた際に入院できない、あるいは医師による適切な診断・治療を受けられないこと」に直結したと思われる。

 次いで医療レベルである。先述したように、筆者はイタリアに直接病院や医療関係の調査に行ったことがないので医療のレベルを正確に判断する立場にはないが、一つの例として「脳卒中の死亡率」を取り上げてみたい(前掲表参照)。

 この差を見ると、急性期の疾患において、やはりドイツの方が医療レベルは高いとみた方がいいであろう。

 もう一つの重要な要素となる「医師数」においてはイタリアとドイツはあまり差がない。これはヨーロッパには比較的、医師数が充実している国が多いということによる。

 もちろん、ドイツは感染者数が少ないから、「現状では医療崩壊するわけがなく、今後はどうなるかわからない」という批判はあり得る。