【ベーシックインカムの長所】
(1)あらかじめ予想できる収入なので生活設計がしやすいこと
(2)使い道が自由であること
(3)公平に支給されること
(4)支給対象者を確認する手続きが要らないこと
(5)受給者が恥の感情を持たずにすむこと
(6)定額なので額が大きすぎなければ労働意欲を阻害しないこと
(7)他の社会保障制度よりも事務が簡素で低コストであること

 多くの人が誤解し、違和感を持つのは、お金持ちにも現金を支給することの当否だろう。この点については、ベーシックインカム単独で考えるのではなく、課税とセットで再分配効果を見るべきだ。

「高所得者(高額の資産保有者もだが)に高負担を」を実現したいなら、所得制限などの条件を付けて給付対象を調整し、さらに高所得者にはより高額な税金を課すような二重の調整を行うのは避けた方がいい。それよりも、所得税や資産税などで調整する方が簡素で透明性が高いからだ。

 また、ついでに言うなら、「財源がないのではないか」という心配は杞憂だ。ベーシックインカムで国民に現金が配られているのだから、課税できる対象は拡大しており、税金の負担能力は心配に及ばない。税制を再分配制度としても公平に設計すればいいだけのことなのだ。給付と徴税と両方を複雑化させるのは愚策だ。

 また、上記の長所(7)に関連するが、生活保護や雇用保険、年金などは順次ベーシックインカムに置き換え可能である。

 例えば、国民年金(基礎年金)を全額国庫負担にすると考えてみよう。この措置には、年金加入者1人当たり1カ月に1万6000円強のベーシックインカムを受給するのと同様の効果がある。特に所得が低い場合が多い若い人には効果が大きいだろうし、第3号被保険者(サラリーマンの専業主婦の妻)の相対的優遇措置がなくなるので、女性の労働参加を促進する効果がある。老後の無年金者が減るし、国民年金保険料の徴収作業も要らなくなる。その代わり、高所得者や資産家はより多くの税金を払う。こうした政策は、コロナ問題がなくても実行していいと筆者は思う。