もう1つ効力を強化されたのが、「意匠権自体の存続期間の延長」だ。これまでの存続期間は、意匠権の「登録日から20年」だったが、今回の改正によって「出願日から25年」になった。権利保護の起算日が異なるものの、「出願から登録までに半年~1年ほどかかるので、実質4年~4年半ほど権利が長く保護されるようになった」(布施弁理士)という。

 そして最後に挙げる改正の大きなポイントが、2019年から段階的にスタートしている、意匠法の出願や登録に関わる「手続きの負担緩和」だ。これまで意匠を出願する際は、6面図で物品全体を表す必要があり、さらに出願する意匠以外の物品の映り込みはNGだった。しかし、今回の改正の一環として、昨年来、意匠が分かれば6面図は必要ではなく、また、表現上必要なら出願意匠以外のものが図面の中に表わされることも可能になった。

 また、これまでは1つの物品につき1つの権利(1意匠1出願)が原則で、例えば、ゼリーであれば、容器の中にゼリーが入っている状態では登録できず、それぞれで登録しなければならなかった。それが昨年からは、容器と中身が一体となったデザインも創作や流通の事情を考慮して社会通念上の一体性が認められる場合などには、「1出願」として、登録可能になっている。

「デザインが経営資源」になる時代
りそなはアプリを意匠出願するが…

 こうした大きな改正が行われた背景には、一体どのような事情があったのか。布施弁理士は、「IoTやAIなどの進化によって産業構造が大きく変化しており、単なる技術力や品質の高さだけでは勝負できない時代になった。こうしたなかで、デザインはイノベーション促進やブランド形成の源泉として、企業の競争力を高める重要な要素になっている。つまり、デザインを経営資源として有効活用し、保護するための環境を整備しようと経済産業省や特許庁が動いたことが大きい」とその理由を語る。

 実際、デジタルを活用したビジネスが隆盛になる中で、デザインが真似される事例は増加。知的財産権の保護などに詳しい骨董通り法律事務所の岡本健太郎弁護士は、「アプリの画面やアイコンを真似された、などと訴えるクライアントも増えている」と語る。時間をかけて作った画像デザインであっても、オンライン上でビジネスを行う都合上、多くの人の目に触れた途端にデザインを模倣されてしまっては水の泡だ。

「これまでは意匠登録できない物品以外のデザインを模倣され、登録商標もない場合、著作権法や不正競争防止法に基づく請求が中心であったが、いずれも請求する側に、権利の存在や権利侵害の事実などを立証する責任がある。著作権法上、実用品のデザインには著作物性が認められ難い傾向があり、不正競争防止法上、類型によって商品等表示性(注:デザインが商品又は営業の表示といえること)、周知性などが求められるなど、請求のハードルが高い上に手間がかかる場合も少なくない。

 しかし法改正により、意匠権の保護対象が広がった。意匠登録が行われていれば、デザインを模倣されても、請求する側は意匠権を根拠に権利主張でき、立証負担も軽減するだろう」(岡本弁護士)