その乗員の上陸や基地外に出ることを禁じる権限は地位協定により日本政府にはないから、米軍に頼るほかない。

 こうした問題は米海軍に限らない。日本にいる米海兵隊1万9400人は戦車は持っていないが、水陸両用の装甲車やヘリコプター、オスプレイなどで訓練すれば「3密」は避けられない。

 歩兵の戦闘でも今日では小銃よりは機関銃、対戦車ミサイル、迫撃砲など、複数の兵士が使う兵器が主力となり、兵士が1.8mの間隔を置いて訓練することはまれだ。

 空軍では戦闘機だけは大部分が単座でも、それ以外の輸送機、早期警戒機、空中給油機など、複数の乗員が必要な航空機が多く、整備員も1人ずつ離れて作業するわけにはいかない。

 もちろんこうした問題は米軍だけでなく、自衛隊にも、他の諸国の軍隊にも共通する。

 軍や警察などは蔓延防止のための行動規制の対象外になっていても、感染者、死亡者が続出すれば大混乱になってしまう。

 戦時なら発病の危険を冒しても任務の遂行を優先することもあるだろう。だが「平時に兵士を病死させるのは避けるべきだ」とのクロージャー大佐の論は正しいと思わざるを得ない。

「高原状態」続けば国防費削減
各国の軍が大きく変わる可能性

 今回、新型コロナウイルス感染症の拡大が防げて、感染者や、死者の増加率は低下するとしても、「高原状態」が続けば各国の軍の活動は大きく変わらざるを得ないだろう。

 さらにこの疫病の蔓延による経済、財政への打撃はどの国でも大きいから国防予算にも響く。

 トランプ政権の2兆ドル(約220兆円)の景気刺激法案が3月25日、米議会で超党派で可決され、27日大統領が署名して成立したが、この額は米国の2020年度の国防予算7500億ドルの3倍に近い。

 安倍政権も7日に、総事業費がGDPの20%にあたる108.2兆円の緊急経済対策を決めた。総事業費の規模は日本の2020年度の防衛費5.3兆円の20年分に等しい。このうち政府の支出は39.5兆円だが、それでも防衛費の7年分だ。この財政支出の多くは国債の増発で賄われることになるが、米国はすでに約23兆ドル(約2480兆円)の累積財政赤字を抱えており、そこに巨額の債務が加わる。日本も国債残高が約900兆円に達している。