「今、いくら貯蓄?」導く公式

 ゆとりある老後生活には1億円が必要といった指摘もある。公的年金も減額が避けられそうにない時代にあって、会社員の生涯賃金がせいぜい2.5億円といわれる中、そんな大金を工面するのはほとんどの世帯が不可能だろう。

 では、老後の備えとして本当に適切な水準とは、一体幾らなのか。自分の必要額を把握するため、経済評論家の山崎元氏と、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏が作成した「資産形成の公式」を使ってみていこう。

 この数式を使えば、年収や老後生活のイメージに対して、「今、いくら貯蓄すればいいのか」ということが明確になる。生活水準に応じて、個々にとっての最適解が導けるというのが、この数式の強みだ。「投資など面倒くさいことを考えなくとも、必要な貯蓄さえできていれば老後は大丈夫」と、山崎氏は数式の意義を解説する。

 早速、数式の中身を見ていこう。山崎氏によれば、まず必要なのが、老後生活費率の設定だ。「今の生活費に対して、何割ぐらいの水準を老後の生活費として使いたいかを決めよう」(山崎氏)。自分の老後のイメージに応じて、自由に設定可能だが、7割ぐらいはかかる人が多いようだ。

 次に、自分の手取り年収を把握しよう。ただし、注意したいのが、現在の年収ではなく、今後の手取り年収の平均ということだ。若い人で、これから昇給が見込めるなら、現在の年収より高めに設定する必要がある。次に、将来もらえる年金額の想定だ。不動産収入などの定期収入もここに含める。いくらもらえるか分からない人は、大まかに年収の3割と見積もっておけばよい。

 現在資産額は、預貯金などの資産額だ。気を付けたいのが、今後大きな出費が予定されているときは、それを差し引いて考えること。学費や住宅ローンの頭金などは、マイナスの資産としてカウントする。

 最後に、現役年数と老後年数だ。「現役年数」は、これから定年退職するまでに働ける年数なので、単純に計算すればいい。「老後年数」は退職してから生きる年数のことだが、寿命は誰にも分からないので、一律30年として問題ないだろう。

 実際に、子どものいない松尾さん世帯(手取り年収400万円程度)で計算してみよう。

 松尾さんは、今後それほど大きく給料は上る見込みがないと予想しており、「手取り年収」は450万円と想定した。預金が200万円あるので、計算上の「現在資産額」を200万円としている。

 また、今後65歳まで働き(「現役年数」は28年)、その後95歳まで生きる(「老後年数」は30年)と想定した。老後は現役時代の生活費の7割程度で暮らすと考え、もらえる「年金額」は年額120万円と想定している。

 さて、実際に式に当てはめてみるとどうなるだろうか。必要貯蓄率はなんと25.6%となり、「手取り年収」450万円のうち、115万円も貯蓄しなければいけない計算となった。

 これは、かなりつらい結果である。子育ての資金が要らず、まだ賃貸住まいの松尾さん世帯ですらこの金額となると、多くの世帯が、想像よりもはるかに高い貯蓄額となるはずだ。しかし、現役時代の7割の生活を維持しようとすれば、これが現実なのだ。