『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』は東京都知事の小池百合子が2017年7月の都知事選で勝利した際に言及した“座右の書”。ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、インパールなど旧日本軍が致命的なダメージを受けた六つの戦闘を検証し、敗戦に至る要因を分析したものだ。その『失敗の本質』が新型コロナウイルスによる感染症に直面して再びクローズアップされている。
キーワード的に言えば、「前例重視」「曖昧な指示」「戦力の逐次投入」。そして『失敗の本質』は結論的にこう総括している。
「作戦目的に関する全軍的一致を確立することに失敗している」
今年1月、中国の武漢市が新型コロナウイルスにより都市封鎖されて以来の日本政府の対応のまずさと重なり合うところがある。4月13日の衆院決算行政監視委員会で無所属の江田憲司(神奈川8区)が政府側をこう追及した。
「戦力の逐次投入は一番の失敗の原因だ」
確かに政府の方針に一貫性がなく、その都度対応が変わってきた。いまだに品薄状態が続くマスクの供給はその象徴だ。当初は6億枚の提供を公言した。しかし、一向に問題が解決しない状態が続くと、首相の安倍晋三が4月1日になって突如として口を開いた。
「再利用可能な布マスクを全世帯に2枚ずつ配布する」
見積もられた経費は466億円。“アベノマスク”とやゆする声も出たが、官房長官の菅義偉は強く反論した。
「洗濯により平均20回使われれば、使い捨てマスク20億枚分の消費を抑えられる」