「山口那津男の乱」と呼んでいいだろう。公明党代表の山口那津男の鬼気迫る直談判に首相の安倍晋三が折れ、一夜にして新型コロナウイルス対策の中核部分の大転換に追い込まれた。
安倍がこだわったのはコロナウイルスによる景気の急落で減収となった世帯に限った30万円の給付。自民党内には全国民に一律10万円支給論が根強く存在したが、副総理兼財務相の麻生太郎が立ちはだかった。
「一律給付は効果がなかった」
リーマンショックに首相として遭遇した麻生は自らの経験から強く抵抗した。このため政府としても減収世帯への1世帯20万円給付でまとまる。さらに安倍と自民党政調会長の岸田文雄との会談で30万円に上方修正された。
「1世帯30万円支給にするべきであると(安倍に)申し上げた。総理と意見、認識が一致した」
珍しく岸田が胸を張った。安倍には国民向けのアピールと同時に、ポスト安倍の候補者とされる岸田に「花を持たせる」(政権幹部)という思惑があったに違いない。
だが、ここに落とし穴があった。安倍の政権運営を支えてきた自民党幹事長の二階俊博、官房長官の菅義偉、山口の3人が蚊帳の外に置かれたからだ。安倍は一気に30万円の現金給付に必要な約4兆円を含む総額約16兆9000億円の補正予算案を閣議決定した。しかし、安倍にとって「不都合な真実」が姿を見せつつあった。各メディアの世論調査だ。