認知症条例が続々と施行も
自治体によって内容はさまざま

 この動きに呼応するかのように、地方自治体でも認知症の条例作りが相次いでいる。今年4月1日に名古屋市が施行した後、7月に滋賀県草津市、10月に東京都世田谷区がそれぞれ施行予定だ。9つの県市町区で出そろうが、認知症への向き合い方にはかなりの温度差がある。

 2018年4月に全国で初めて条例を施行したのは愛知県大府市と兵庫県神戸市。大府市内では07年12月に認知症の高齢者がJR東海の線路内で列車事故に遭い、その賠償責任を巡って裁判が続いた。論議を呼んだこの事件を機に、同市は条例制定に乗り出した。

 条例11条に基づき、自宅から出て行方不明になりかねない住民をあらかじめ登録する制度を設け、その登録者が無料で賠償責任保険に加入できる仕組みを創設。約2年後の現在、79人が保険に加入している。昨年5月に加入者が鉄道事故で亡くなり、同制度により保険会社が賠償金の支払いを検討中だ。

 神戸市は賠償責任保険への加入制度に加えて、認知症の診断制度も条例に明記し、19年1月から導入した。対象は65歳以上だが、75歳以上の全住民に受診券を配布。診断で認知症と判定されると、賠償責任保険に加入できる。共に利用者の自己負担はない。

 受診者は昨年11月末時点で1万3833人に上り、賠償保険の加入者は1月末時点で3884人。うち診断制度を経た受診者は1550人となっている。昨年5月に飲食店で加入者が席を汚したため約13万円の賠償金が支払われた事故が1件あった。

 別に、同市独自の見舞金制度も設け、事故の際に支払う。他人の自転車を持ち帰って破損させた事故と、自宅でガラス戸を損傷した際に、それぞれ1万5000円、9000円が支払われた。

 また、行方不明になった時に発見しやすい「GPS安心かけつけサービス」も始めた。利用料は月2000円で、出動時は3時間までは同市が負担する。1月末時点で106人が加入している。

 こうした一連の事業の助成費を賄うため、19年から3年間、400円の市民税を新たに徴収。「認知症の人にとってのリスク要因を解消していくことが、やさしいまちづくりにつながる」と同市では話す。

 条例を施行した自治体で最も小さいのが愛知県設楽町。人口約4700人だが、この4月に高齢化率は50%を超えた。山間地に集落が点在し、独居や老老世帯の後期高齢者が多い。

 条例制定を機に認知症カフェ「寄ってみんカフェ」を特別養護老人ホームで始めた。同町が特養に運営を委託し、毎月第3水曜日に開く。参加料は無料で、40人近くが集まるという。