テレワーク,抵抗感
新型コロナウイルスの影響でテレワークを活用する企業が増加していますが、いまだに抵抗感もあるようです(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型コロナウイルスの感染拡大で広がるテレワーク。いまだに根強い抵抗もあるようだが、エンジニアとしてマイクロソフト、グーグルで活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は「オンラインがオフラインの代わりにならないというのは幻想」と明言する。デジタル化で浮き彫りになる仕事の本質について、及川氏が語る。

「こんな時期だけど、直接お会いしたい」
こうした連絡をしてくる人の思考回路

 新型コロナウイルスの感染拡大により、これまで当たり前とされてきた仕事の進め方は、いや応なしに、劇的に変わってしまいました。4月7日には緊急事態宣言が発令され、感染爆発を防ぐための外出自粛要請を受け、テレワークを推奨したり、必須としたりする企業も増えました。

 しかし日本では、こういう状況になっても「本来お会いすべきところを、誠に失礼ながらオンラインで」といった考え方が、いまだに根強くあります。私も既に感染が広がり、テレワークを原則とする企業も出始めていたときに「オンラインだと話の真意が伝わりにくいので、こんな時期ではありますが、直接お会いしてお話ししたい」と言われたこともあります(丁重にお断りしましたが)。

 いろいろ話を聞いてみたところ、どうやら「会って話したい」タイプの人は、直接会うことで仕事の“何か”が加速される、あるいは解決すると信じているようなのです。リモートの情報、あるいはデジタルの情報では、リアルな情報、アナログな情報の代わりにはならない、というのです。

 オンライン会議などでは、確かに回線の状態により通信が一部中断することや、音が切れることがあります。また、そもそも「音という情報のデジタル化」とは、連続したアナログな情報をとびとびの時間軸で取得して、非連続的な値に落とし込むことなので、情報の解像度にもよりますが、元のデータと比較すれば情報量が欠落しています。

 それに音はリモートでも問題なく聞き取れたとして、息づかいや、カメラのフレーム外で見えなくなっている姿勢など、リアルなら五感で得られる情報はそぎ落とされます。会議の相手が不快な顔をしたとして、同じ空間を共有していれば部屋の気温が高いせいかもしれないと気付くことができ、「暑いようなら空調の温度設定を変えましょうか」といったコミュニケーションが取れることでしょう。これがモニター越しでは「実はあちらの部屋が暑いことが理由だった」ということも伝わりません。

 それでもなお、私は「オンラインではオフラインの代替にならない」というのは、もはや古い考え方で、幻想だとさえ考えています。実際にいくつものオンライン会議を行ってきた経験から述べると、オンラインで代替できない情報の方が少ないからです。