直接会わなければならない非礼を
わびる日が来るかもしれない

 私たちは肉体を持ったフィジカルな存在ですし、体験の多くはフィジカルな空間で行われています。ですから今までは、オフラインのものをオンラインにするときには、人間の体験のうちの一部分だけを切り出してオンラインに置き換えることがほとんどでした。そこでの考え方は「現実にいかにデジタルを取り入れ、効率化したり付加価値を加えたりするか」というものでした。

 しかし、現在世界中で継続している新型コロナウイルスの爆発的感染の影響は、今後1年は続くのではないか、という見方もあります。また感染症だけではなく、異常気象など、今までとは異なる環境・条件が現れる可能性もあります。3年後、5年後を考えたときには、「都市部の人は夏、外に出ることができない」ということもあり得るかもしれません。新たな気象条件で、新しい感染症が流行することもあり得るでしょう。

 そうなると、オフラインでサービスを実施すること自体がかなわなくなるかもしれません。「オフラインにオンラインを取り入れる」という発想ではなく、最初から最後まで、全ての体験をオンラインで提供するのが当たり前の世界が訪れる可能性だってあるのです。そこでは「オンラインですみません」と謝るのではなく、どうしてもリアルで会わなければならないことの方を、非礼としてわびるようになるのかもしれません。

 現状でも、今回のことをきっかけに、ミーティングはビデオ会議で十分な場合も多いことが分かってきました。混雑した電車に乗る通勤がなくなったことで、効率よく仕事ができることを実感した人も多いのではないでしょうか。毎日同じ時間に集まらなくてもいい、という価値観が広がれば、本当に必要なことだけをオフラインで行いましょう、という方向に向かうはずだと私は考えます。