返済期間の延長は、一定期間の扱いではなく契約の見直しに近い要素がある。このため、銀行など民間金融機関では慎重な取り扱いとなる(つまり、まずやらないという意味)。返済期間を延ばした分だけ、ローン保証料が追加で発生するし、延長することで完済年齢が70歳を超えるケースがほとんどであるため、銀行も貸し手としてのリスクが高まる。まず銀行は勧めないだろうし、実行もしないだろう。私も絶対にお勧めしない。

 しかし、「フラット35」の見直し方法において、住宅金融支援機構は(収入減少などの条件を満たせば)「最長15年(完済年齢は80歳まで)の延長に応じる」と、わりと声高にリリースしている(住宅金融支援機構「返済が困難になっているお客さまへ」)。

 住宅金融支援機構は、旧住宅金融公庫時代であるバブル崩壊後の1998年に返済期間の延長を数多く実行した。その結果、完済年齢が80歳を超える住宅ローンを持っている人がいまだ多数いる(当時は80歳以降まで返済期間を設定することが可能だった)。

 住宅ローン契約者が亡くなった際に借金を肩代わりしてくれる「団体信用生命保険(団信)」は80歳で終了するが、93歳、94歳まで返済が続く契約になっている住宅ローンを何度か目にしたことがある。団信が切れた後、81歳を過ぎてローン契約者の夫が死亡すると、残された妻は遺族年金からローン返済をするということか。まず、返済不能に陥るだろう。そろそろ社会問題になる時期かもしれない。

 本当に住宅ローンの返済が困難な状況になり、リスケをするなら、(1)の「一定期間の減額」がいい。他の選択肢に比べて、将来に先送りする負担を大きくしなくて済むからだ。

 毎月数万円の返済額減額であれば、収入ダウンが回復するまでの間、貯蓄を取り崩す方法もある。ただし、その貯蓄は子どもの進学費用として貯めたお金かもしれない。また、勤務先の経営状態がかなり深刻だったりすると、貯蓄はローン返済に回さず、とっておく方がいい場合もある。長期的な視点で家計を見て、判断したい。

 いつも当コラムでお伝えしていることであるが、家計が危機的状況に陥ったときは収入と支出を書き出してみるのが効果的。ムダな支出はどこの家庭でも必ずあるので、支出のスリム化に取り組むのが先決だ。

 この記事を書く前にいくつかの銀行の本部にいる住宅ローン担当者に話を聞いてみた。銀行に返済の見直しの相談をした人の全てがリスケをするわけではないそうだ。リスケの方法に応じた試算を見て、トータルで返済額が増えることなどのデメリットを考慮すると、「他の支出の見直しに取り組んでみます」と帰っていく人も多いという。

 銀行で相談するメリットは、「自分のローン」で試算した見直しプランを見ることができることだろう。具体的な数字があれば、「これなら他の支出の見直しでカバーできそうだ」「減額すると、元に戻したときの増額に耐えられそうにないかも」など、判断するための材料を得ることができる。