ただ、ここで言う自由港(free port)は自由貿易区(free trade zone)のことを意味するため、政治的には香港やマカオのような自由度が得られることは考えられない。
世界経済が衰退に陥っている今、海南をこの自由貿易区に改造することは、経済のグローバル化を支持する中国の国家としての意思を明らかにしただけではなく、中国が対外開放へとさらにアクセルを踏むことも意味するので、世界と中国自身にとって重大な意義を持っている。
自由港は一般的に開放度の高い自由貿易区とみなされ、税関が開放され、貨物が自由に移動し、入港貨物の貿易管理措置が最大限に簡素化され、その申告手続きも簡素化される。中国政府は明らかに世界でも有数の自由貿易港であるドバイ、香港、シンガポールを参考に、海南省の自由港推進措置をデザインしているだろうと思う。
中国全土をあげて支援
海南省が自由港に適する背景
2018年4月の時点で、中国政府はすでに海南の改革開放を一層促進させようと考え、全世界の投資家が海南に投資して事業を興すことを歓迎し、さらに中国全土の力をあげて海南を支援することを提案している。太平洋とインド洋に面する重要な位置にある海南省は、東南アジアに近く、アジア太平洋諸国と地理的に結びつくのに最も便利な省である。
中国最大の経済特区として、海南は中国の改革をテストするための地域になってすでに久しい。たとえば2000年には、海南省が率先して外国人入国に便利なビザ発給政策を実施し、2003年には全国に先駆けて一連の航空運輸業務権を開放し、2017年にはさらに56本の国際線を開通した。2011年4月20日からは離島免税政策が試行実施されるようになった。
こうした下地があったから、海南省は今回の自由港適用対象に選ばれたのだろう。自由港になると、海南省は、高度な貿易投資の自由化が継続されるほか、免税の拡大、税・費用の減免、人民元の国際化など、財政・金融分野で政策的優遇措置が講じられるだろう。
免税店ビジネス、レジャーと観光、医療とヘルスケア、熱帯農業と石油・天然ガス開発、さらにサービスを提供するデジタル経済とフィンテックなどの分野にとっては、発展しやすい環境が形成されるだろう。競馬、宝くじも新しい成長の機会に恵まれる。
インフラの面においては、空港、港湾、道路、光ファイバー通信ネットワーク、電力網などの建設もさらに充実していくだろう。ただ、高度な人材を必要とするハイテク産業が、果たして海南省の狙い通りに誘致できるのかはすぐにはわからない。