中国が経済回復を目指して試行する、常識に囚われない「2つの手」緊急事態宣言の延長が決まった日本に対して、いち早く経済回復への取り組みが始まった中国。彼らが試行する、常識に囚われない「2つの手」とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

緊急事態宣言を延長する日本に対して
経済回復へと進む中国の取り組み

 5月6日までとされた緊急事態宣言の発令期間がようやく終わりに近づいたのに、また1カ月ほどの延長となり、5月末までは「STAY HOME」のままのスタイルで自粛生活を続けざるを得なくなった。「フレキシブル・ロックダウン」と海外から揶揄されている日本の緊急事態宣言ではあるが、それでもいろいろと自粛しなければならないので、見えないストレスが溜まり、体のどこかがおかしくなってしまいそうだ。

 私もこの2週間ほど、ひどい口内炎に苦しんでいた。明らかにそのストレスのせいだと思う。だから、緊急事態宣言の発令期間の延長は、必要な措置だと頭では理解していても、コロナ太りになった体がやたらに外の空気を、人との触れあいを、走ることを、じゃれることを求めている。

 原稿執筆に関する仕事でも、コロナ疲れが出ている。そのため、今回はテーマを変えようと考え、一歩先にロックダウン状態を終了させた中国の新しい動きを取り上げることにした。

 コロナ禍のため、経済が3カ月くらい麻痺してしまった中国は最近、経済回復への取り組みを急いでいるが、諸外国との摩擦がエスカレートしている中、海外との貿易が「人来了、単没了」という状態に陥っている。

 つまり、旧正月の帰省で故郷に戻った労働者が、ロックダウンのせいで数ヵ月間も職場に戻れなくなっていたが、その現象は最近ようやく解消され、労働者が職場に戻ってきた。これは「人来了」ということだ。しかし一方で、肝心な「単」つまり海外からの仕事の注文がなくなってしまったのだ(「単没了」になる)。日常的に人手が足りない状態が続いている深センなどの主要都市でも、仕事が見つからず路頭に迷う失業者が急速に増えている。経済が想像以上に疲弊している。

 コロナ禍がもたらした経済的損失を取り戻すためには、今までにない道を切り拓き、手を打つ必要がある。そこで最近中国が打ち出した、「2つの手」が注目されている。

 1つは、海南省の島全体を丸ごとに自由港にすること。自由港とは文字通り、フリーポートのことをいう。4月17日、中国の全人代常務委員会第17回会議では、中国(海南)自由貿易試験区についての関連法律の規定の一時的調整と適用に関する全人代常務委員会の決定を表決、採択した。

 わかりやすく説明すれば、海南省つまり海南島全体を香港やマカオのような特別行政区にすること、言い換えれば、海南に準自由港の法的地位を与えることだ。そのため、海南はより広く開放され、「独立関税区」になる可能性も高くなる。海南はその「特別政策」を獲得することで、それまでの深センのような特区を上回る自由度を得られる可能性がある、と専門家は推測している。