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「人口、年齢、雇用、教育、所得など人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。リードタイムまで明らかである」(『イノベーションと起業家精神』)
企業人、経済学者、政治家は、人口構造の重要性を口にする。ところが彼らは、自らの意思決定においては、人口構造に注意する必要はないとしているかのようだとドラッカーは指摘する。
人口構造こそ、初めに分析し検討すべき要因である。国内外の政治経済で、先進国における少子高齢化と途上国における人口増大ほど決定的な要因はない。
人口構造の変化そのものは予測不可能かもしれない。だが人口構造の変化には、リードタイムがある。
変化は機会である。それに備える十分な時間もある。
ところが、多くの人びとが人口構造の変化を機会とするどころか、事実としてさえ受け入れていない。その結果、少数の通念を捨てて現実を受け入れる者、新しい現実を自ら進んで探す者は、長期にわたり果実を手にする。競争相手が人口構造の変化を受け入れるのは、変化が顕在化した頃だからだ。
「人口構造の変化が実りあるイノベーションの機会となるのは、既存の企業や社会的機関の多くが、それを無視するからである。人口構造の変化は起こらないもの、あるいは急速には起こらないものとの仮定にしがみついているからである」(『イノベーションと起業家精神』)