物事には
「原則」と「例外」がある
男性 あと一つだけ質問させてください。
出口 はい。
男性 私、50年間、睡眠時間を削って何をしてきたかというと、勉強してきたのです。ですから、20代はほとんど布団で寝たことがなかったのです。
出口 僕も本が大好きで、会社から帰ってからはだいたいずっと本を読んできました。
でも、それは、長時間労働とは分けて考えるべき問題ですよね。
男性 ただ、私はどこまでが仕事で、どこからが勉強なのかが、わからなくなってきています。
私は今、アメリカの有名大学のディープラーニングをオンラインで勉強しています。
アメリカのオンライン授業では、逐一教えず、事前にしっかり勉強してきたうえで授業をするスタイルが確立されています。
出口 APU(立命館アジア太平洋大学)でも図書館の閉館時間が夜の12時ですが、学生からは「24時間開館にしてほしい」といわれています。
ただ、図書館で働く側の問題もあるので、どうしたらいいかを考えています。
残業問題を考えるときに大切なのは、常に原則と例外があるということです。
僕自身は、ある時期、ある一部の人たちが一所懸命勉強するのはいいことだと思います。
ただ、日本という国の社会制度としてみんなが長時間労働をやるのは反対です。
そんなことをしても絶対に生産性は上がりません。
制度としては、ヨーロッパ並みの年間1500時間以下の労働時間を実現し、生産性を上げるべきです。
マクロとミクロ、原則と例外を混同したら議論にはならないと思います。
男性 ありがとうございます。
過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。次ページには過去の連載ベスト5ランキングもありますのでご覧ください。