正義連は韓国では神聖不可侵

 正義連を真正面から非難する言動が元慰安婦から発せられたことは、韓国社会にとって極めて重大な事件である。韓国にとっても日本にとっても、単なる政治団体の内輪もめとして見過ごすことはできない。

 『反日種族主義』の著者、李栄薫(イ・ヨンフン)氏によれば、正義連は韓国では神聖不可侵であり、だれも批判できない存在であるという。正義連はその絶対的な地位を利用して、これまで勝手気ままな行動をとってきた。それが慰安婦に関する歴史的事実の歪曲であり、慰安婦問題解決の妨害である。

 そもそも、韓国では慰安婦の歴史は挺対協が作ったものである。韓国にとって歴史の真実とは、「韓国国民にとっての正しい価値観」であり、事実を積み上げたものではない。

 イ・ヨンフン氏の12年前に発刊された「大韓民国の物語」という憂国の書は次のように述べている。

 「韓国の高校の国史教科書(2001年版)には『日本は世界史において比類なきほど徹底的で悪辣な方法で我が民族を抑圧し、収奪した…。戦時期に約650万名の朝鮮人を戦線へ、工場へ、炭鉱へ強制連行し、賃金も与えず、奴隷のように酷使した。その中には朝鮮人の乙女たちがおり、日本軍の慰安婦とした…」

 「しかし、この教科書の内容は事実ではない。政治的な意図を持った歴史家により作られたものである」

 こうした歴史の歪曲の中心にいるのが正義連であり、正義連にとっての「正義」に基づいて慰安婦の歴史は作り上げられた。

“事実”のために猛烈な反発

 イ・ヨンス氏は、挺対協が元慰安婦をインタビューし、18年に出版した『Remember Her』に参加した。そのイ・ヨンス氏が会見でこの本についても「内容の検証がきちんと行われずに出版され、販売されている」と批判した。

 韓国において慰安婦の“真実”として社会的に許容されるのは、『Remember Her』で述べられている見解だけである。その核心にある考え方が、「日本軍は元慰安婦の人々を強制的に連れて行った」という“事実”だ。

 これまで正義連は、慰安婦の歴史が覆されそうになると、極端なまでに反発してきた。

 筆者は在韓国大使館で政治部長をしていた93年、当時の挺対協に元慰安婦へのインタビューを申し入れたことがあった。日本政府関係者である私たちのインタビューが、元慰安婦を傷つける恐れがあるということで断られたのだが、それは表向きの理由だろう。真実は、自分たちが作り上げた慰安婦の歴史を壊されたくないという理由だったはずだ。