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旭化成ホームズが発表した「2.5世帯住宅」という新商品が業界内外で話題となっている。
新商品が話題になることが少ない住宅業界では珍しいことだ。
今日では一般名詞になっている親世帯と妻子のいる子どもが一軒の戸建てで暮らす「2世帯住宅」は、1975年に旭化成が銘打った商品。それから37年の歳月を経て、「0.5世帯」がプラスされたのだ。
この「0.5」とは成人した未婚の子を指す。旭化成は商品パンフレットで「37歳、独身のキャリア女性」をモデルケースにしているが、要は「いい年齢に達したのに独身で結婚の予定が当面はない子ども」をターゲットにしている。そうした「0.5」のために、単身者用アパートの一室のような、クローゼットや洗面台などを備えた独立した「充実マイルーム」を用意しているのが従来の2世帯住宅と違う点なのだ。
2.5世帯住宅へと進化した背景は家族構造の変化だ。「スネかじりの息子」「バリバリのキャリアウーマン」などパターンはいろいろだが、当面結婚予定のない成人した子どものいる家庭は珍しくなく、従来の2世帯住宅とは違う間取りを望むケースが増えてきているという。実際、総務省の推計では、35~44歳の6人に1人(約300万人)が未婚かつ親と同居中といい、こうした層を取り込んだ商品企画は必須でもあった。
多世帯で住むことに対する価値観の変化もある。かつて2世帯住宅を建てる動機は決して前向きなものばかりではなかった。地価高騰で土地の購入が無理だった子どもが止む無く親の敷地に建てるケースや、老後不安から親が建ててあげるケースが多く、嫁姑問題も付きまとった。そのため、玄関を分離したりするなど極力親子は関わりがなくて済むような間取りが好まれ、1990年代まで旭化成の広告も「気兼ねなく、気苦労なく」と、同居のデメリットをいかに抑えたかをアピールしていたほどだ。
ところが昨今は多世帯同居にメリットを見出した子ども世帯から、積極的に申し出るケースが増えてきている。メリットとは金銭面はもちろん、子ども(孫)の面倒を親(祖父母)に見てもらえることだ。特に働く女性を中心に同居に前向きな家庭が増加、共通スペースを多くしたり、孫が2世帯を行き来しやすくしたりする間取りが好まれるようになってきている。嫁姑問題に関しても、すでに49%がサザエさん一家のような娘夫婦との同居となっているため、かつてほど障害にはなりづらくなっている。