金融機関の中で、コロナ禍による財務への影響が抑えられている損害保険業界。2020年度は外出自粛による自動車事故の減少で利益が上振れる見通しもある中で、損保としての存在意義を巡って、顧客企業や監督当局からの風当たりが日増しに強くなっている。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)
自然災害で保険金支払い1兆円超も増益確保
大手損害保険会社が20日発表した2020年3月期決算は、東京海上、MS&ADインシュアランスグループ、SOMPOの3グループともに最終利益(修正利益)が前の期と比べ2割前後の増益となった。
昨夏には大型の台風15号と19号が各地で深い爪痕を残し、自然災害による業界全体の保険金支払額は1兆円を超えたものの、18年にそれをはるかに上回る台風などの被害が発生しており、19年3月期が大幅減益によって発射台が低くなっていたことが、増益の最大の要因だ。
そのため、期初予想の修正利益と比べると、各グループとも2割前後目減りする結果になっている。
さらに、自然災害による多額の保険金支払いに備えて積み立てておく「異常危険準備金」の状況を見てみると、2年連続の大規模災害によって大きく取り崩しており、残高が心もとない水準になっているのが実情だ。
一部では政策保有株式を売却するなどして資金を確保し、同準備金の特別繰り入れをするといった対応を迫られた。
各社とも財務の改善が遅れ、「20年度こそはなんとか『平時』のままで」という期待を抱いていた中で、今度はコロナ禍が起きた。
「イベントの中止や施設の休業によって、損保各社の補償費用が膨らむのではないか」。市場では当初、そうした見方から業績へのさらなる影響が不安視され、各社とも2月下旬以降は、崖から転がり落ちるかのように株価が下がっていった。