タイ病院個室
日本人も多く利用するタイの民間総合病院。個室が原則で、部屋はホテルのように豪華だ(バムルンラード病院提供)

新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かった東南アジアのタイ。3月26日に発令された非常事態宣言も早ければ6月には見直され、日常の暮らしが戻ってくる見通しだ。こうした中、コロナ収束に大きく貢献し、日頃から現地で暮らす駐在日本人の“駆け込み寺”ともなってきた民間病院の経営に狂いが生じ始めている。収入の柱であるメディカルツーリズム(医療観光)客が大幅に減っているのに加え、ウイルス感染に神経質となった従来の利用者が一斉に敬遠を始めたのだ。病院では今、抜本的な経営の見直しが求められている。(在バンコクジャーナリスト 小堀晋一)

外国人に不便な
公立病院

「かつてのような“お客様”を迎え入れるような経営スタイルだけでは、もう利益を上げることは難しい。コロナ問題はタイの医療を大きく変えた」

 こう話すのは、バンコクの大手総合病院に勤務する経営企画担当者。新型コロナによって、タイの民間病院の経営のあり方が根本から変わってくると指摘する。

 貧富の差が激しく国民皆保険制度が存在しないタイで、伝統的に国民の生命と健康を守ってきたのが全国津々浦々に配置された公立病院だった。

 だが、こうした病院は慢性的に人手不足で、待ち時間も長く、高度な医療も受けにくい。さらに言葉や習慣の違いもあり、日本人などの外国人は利用しにくい。

 タクシン政権時代に始まった低料金もしくは無料で医療サービスが受けられるユニバーサル・ヘルスケア・カバレッジ(通称「30バーツ医療」)や、会社勤めの人が治療を受けられる社会保障としての公的医療制度が近年整備されてきたものの、利用できる人はタイ人の一部に限られ、全ての人々が満足いく医療を受ける体制にはほど遠い。