私がイギリスで和牛の輸入販売業を立ち上げたときには、500万円をかけて冷蔵庫を作ったのに、あるトラブルでその冷蔵庫がパーになってしまい、再度、冷蔵庫を準備しなければなりませんでした。長年続いている中小企業では、こうした試行錯誤が終わっているのです。そこに価値を見いだすのがM&Aです。

「設備」や「権利」も
はじめから付いてくる

「設備」についても同様です。

 新規の設備を導入しても、規格が合わなかったとか、想定より稼働が上がらなかったとか、コスト削減につながらなかったといったようなケースが往々にして起こりえます。しかし、すでに稼働している設備には「安定と実績」という価値があります。M&Aではそれも手に入れることができるのです。

 ただし、設備は、時間がたって劣化していることもあるので、会社を買う際には、工場などの現場に行って現物の設備を見て、稼働状況や追加の設備投資の必要性について確かめることが大切です。

「権利」もM&Aで得られるものです。

 権利には、「許認可」「知的財産権」のほか、「顧客」「ブランド」「場所」なども含まれます。大手企業との「取引関係」も価値のある権利です。

 トヨタやイトーヨーカ堂といった大手企業と取引をしたくても、それをゼロから作るのは難しいでしょう。ですから、買った会社が大手との取引関係を持っているとしたら、それは大きな価値になります。

 このほか、経営陣、従業員といった「人的資源」や、その会社を買うことで生まれる「シナジー(相乗効果)」もM&Aで得られるものです。

 M&Aで会社を買うということは、ただ単に会社を手に入れるだけではありません。以上のような時間や権利なども一緒に手に入れられるからこそ、M&Aには価値があるのです。