いま日本では、後継者不足で事業承継ができずに悩んでいる中小企業が増えている。これまで頑張ってきたものの、コロナ禍によって、事業継続をあきらめた人も多い。そんななか、個人によるM&Aが注目を集めている。日本創生投資のCEOで、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』を上梓した三戸政和氏に、個人が会社を買うことのねらいやポイントを聞く。
会社はオーナーの子どもと考えよう
会社はモノではありません。法的にも会社は「法人」と呼ばれるように、「ヒト」同然の扱いを受けます。何より、会社のオーナーさんにとって、自分の会社は息子や娘のような存在です。
会社を立ち上げ、足下のおぼつかないよちよち歩きの頃は、四六時中、目を離すことができなかったでしょう。成長の過程ではトラブルに見舞われたり、壁にぶつかったりしたこともあったはずです。会社とは、まさに手塩にかけながら育て、自分もともに成長してきた、そんな存在なのです。
ですから、中小企業のM&Aや事業承継はよく結婚にたとえられます。
M&Aで会社を譲り受ける側の私たちは、オーナーさんの子どもと結婚するのと同じです。つまり、M&Aに挑もうとする私たちには、ある人が命懸けで育ててきたものを引き受ける、それくらいの覚悟や気づかいが必要なのです。
これをビジネスライクに「会社を買う」というスタンスでオーナーさんと話を進めていくと、どこかで感情のすれ違いが生まれます。表現の仕方としても「会社を譲り受けさせてもらう」という言い方で進めるほうがいいでしょう。