チョコレートのつくり手が
カカオ豆にこだわる余地がなかった

 現代のチョコレートは装置産業である。安心安全なチョコレートを効率的につくるための設備を整えるには億単位の投資が必要であり、ロジスティックも複雑だ。

 そしてチョコレートは加工製品である。製菓メーカーやパティシエといったつくり手は原料メーカーからチョコレートを購入し、それを加工する。生産、輸送、加工、製造と、完成まで完全な分業で行われるため、つくり手がカカオ豆にこだわる余地も、カカオ豆の発酵やロースト(焙煎)などの製法にこだわる余地も、いずれもなかったのである。