チョコレート市場の新潮流「ビーン・トゥ・バー(Bean to Bar)」の国内の火付け役であるチョコレート専門店「Minimal」。代表の山下貴嗣氏は、コンサルティング業界から脱サラして未経験でチョコレート業界へ飛び込んだ。特集『100年に1度の激変!チョコレート市場』(全9回)の#5では、世界で戦える「日本独自のチョコレート」づくりの可能性を山下氏に聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 長谷川幸光)
これまでのチョコは「フレンチ」に近いが
Bean to Barは「日本食」に近い
――なぜ脱サラしてチョコレート専門店を始めたのでしょうか?
Photo by HasegawaKoukou
僕はデフレ世代よりも少し下の世代です。景気が良くない時代にずっといます。でもそれを嘆いていても仕方ない。祖父母や親の世代は、戦後の焼け野原から日本のGDPを押し上げてくれました。自ら切り開くことを教えてくれたのです。
とはいえ、少子高齢化が進む日本の内需を考えると今後もGDPの減少は避けられず、外貨を得るにも量の経済ではもはや中国やアフリカには勝てない。「質」を高める必要があります。日本のものづくりの特徴である「きめ細かさ」を活かした新しいものづくりはできないだろうか……。
そう考えていたときに頭をよぎったのが、以前訪れたことのある、ニューヨークのBean to Bar(本特集#8『チョコ新潮流「Bean to Bar」が100年に1度の市場激変をもたらし得る理由』参照)のチョコレートの専門店「Mast Brothers chocolate」です。
皆さんがチョコレートを食べるとき、主原料のカカオに着眼することはこれまであまりなかったのではないでしょうか。
製菓用のチョコレートにいかに味や香りを足していくか。これまでの西欧のチョコレートの歴史は、こうした二次加工の知見の積み重ねともいえます。これは、油に油を足してソースを絡めて調理するフレンチに似ています。
こうした「足し算」の製造法に対し、Bean to Barは真逆の考え方です。