技術革新に逆行し
生産者と消費者の橋渡しに

 これに対しBean to Barはまったく逆の考え方だ。技術革新に逆行し、トラディショナルなつくり方でシンプルにチョコレートをつくる。カカオ豆の選別、焙煎、磨砕、ミキシング、成形といった一連の工程に一貫して携わる。工程を分断しないのだ。その際、素材であるカカオ豆自体が持つ個性とその風味を活かす製法にとことんこだわる。

 従来のルールを踏襲する必要がないため、自由なアイデアが個性を生む。そのため異業種から参入するつくり手も多い。カカオニブをそのまま商品化するなど、Bean to Barの楽しみ方は多様化しており、チョコレートは新たな進化を遂げようとしている。

 カカオ豆にこだわるということは、カカオの産地や品種に注目するということである。生産地には必ずその土地や人々の物語がある。つくり手が一貫して携わることで、その物語を消費者へダイレクトに伝えることができる。これまで隔たりのあった生産者と消費者の橋渡しとなるのである。

 つくり手が生産者からカカオ豆を適正な価格で購入し、消費者の声をフィードバックすることで、生産者は自身の仕事に誇りを持つ。つくり手と生産者が一緒に改良すれば、栽培技術の向上や共有につながる。

「Bean to Barは、サステイナビリティの高いシステムでもあります」(Minimal代表の山下貴嗣氏)

 Bean to Barの力はまだまだ小さい。しかし重要なことは消費者が「チョコレートの裏側」を知ることだ。あなたが次に手にする一枚のチョコレート――。その裏にはどのような物語があるだろうか。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Tatsuya Hanamoto