人民元中国人民銀行は、デジタル人民元の試験運用を中国の5地域で進めていることを明らかにした(写真はイメージです) Photo:PIXTA

デジタル人民元の試験運用開始
スマホアプリで決済と送金

 中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は5月、「デジタル人民元」の試験運用を中国の5地域で進めていることを明らかにした。対象となる5地域は、江蘇省蘇州市、広東省深セン市、河北省雄安新区、四川省成都市、2022年の北京冬季五輪の開催地となる北京市の会場周辺である。人口74万人の蘇州市相城区では、公務員と主要企業の従業員が4月末までにデジタル人民元の口座を開設するよう指示され、5月から通勤交通費補助の半額をデジタル人民元で給付されている。

 デジタル人民元は、QRコード決済のアリペイやウィーチャットペイと比べると、ネット接続なしでも使えるところに大きな特徴がある。国営放送の中国中央テレビ(CCTV)は4月29日、「人民銀行がデジタル通貨を連れてきた!ネット接続なしでスマホ決済が可能」というWEBニュースを配信した。4GやWi-Fiなどのインターネット回線に接続していない状況においても、2台のスマートフォン(スマホ)を近づければ決済と送金ができるという。

 これはデジタル人民元が、スマホに掲載されたNFCやBluetoothなどの無線通信系の技術を使うことを意味し、すでに非接触型決済を実現しているApple PayやGoogle Payと似た印象を持つかもしれない。しかし、デジタル人民元は送金も可能で、既存のキャッシュレス決済と差別化されている。

 デジタル人民元は、導入のハードルも低くなっている。個人がデジタル人民元を使うには、既存のアリペイ、ウィーチャットペイ、各金融機関のスマートフォンのアプリを利用すればよいとみられる。

 メディアで紹介された写真を見る限り、中国農業銀行と中国建設銀行のスマホアプリでは、デジタル人民元の残高がすでに表示されている。またこれらの写真には、他の口座残高の現金をデジタル人民元に替えること、口座内のデジタル人民元を現金に替えること、デジタル人民元による決済や送金のログを見ることの3点を実行するためのアイコンも映っている。

 さらに2つのスマホアプリには、QRコードを読み取るアイコン、自分のQRコードを表示するアイコン、2台のスマホを近づけるアイコンもあり、デジタル人民元によってQRコード決済もできると考えられる。