同社は、在宅勤務の推奨を始めた2月18日に、同時に10人以上の会議はオンラインとすることにも決めた。また、例年は経営陣と1000人単位の社員が一堂に会する期初のキックオフイベントについてもオンライン形式で実施したという。

 こうした対応ができたのは、5年前からリモートワークの導入を進め、改善を続けてきた経緯があったからこそ。だから今回の未曽有の有事においても戸惑うことなく、スムーズに在宅勤務へと移行できたのだ。

リモートワークは万能ではない
大切なのは最適な働き方の選択

 今回のコロナ禍で、このように高い在宅勤務率を実現したリクルートだが、佐野室長は「リモートワークとオフィスワークのどちらにもメリット・デメリットがある」とした上で、こう語る。

「今回の経験から、多くの日本企業がリモートワークという働き方にリアリティを持つことになったと思う。ただ、リモートワークは非常に有用な働き方の“選択肢”ではあるが、もちろん万能ではない。オフィスワークのほうがよいこと、オフィスワークでしか得られないことはもちろんある。大切なことは、個人や組織が、そのときの環境や状況によって、最適な働き方を自由かつ柔軟に選択できることだろう。

 リモートワークは、今回のような『有事に従業員の安全を守る・事業継続の一手法』としても機能し、平時であれば、出産や育児、介護など『個人の中長期的なライフステージの変化』に応じた選択肢になりうる。

 また、個人においてはもっと短期的な『仕事やプライベートの状況』に応じて選んだり、組織の業務内容やミッションの進捗状況に応じての選択もあっていい。働き方の選択は、『働く人自身の意志』によってなされることが理想である」(佐野室長)

 今回の「強制的な在宅勤務」の実施によって、リモートワークを前向きに捉えた会社員も企業も少なくないはずだ。しかし、これからの時代に、すべての社員に、恒久的にリモートワークを推奨するというのも乱暴であり、望ましいものではないだろう。

 自社の社員が働きやすい環境を自由に選択できるにはどうすればいいのか。そうした視点を持って働き方改革を進めると、今後、新型コロナウイルス感染拡大のような未曽有の有事が起こった際でも企業は、迅速かつ柔軟に対応できるのではないだろうか。