在宅勤務へ迅速に移行できた2つの理由
「対策本部」と「2015年からの働き方改革」
まず、1つ目の理由が1月末に佐野室長ら各部門の責任者によって立ち上げられた「新型コロナウイルス対策本部」による迅速な対応だ。国内でもコロナ感染者が出始めたこのタイミングで、感染予防対策を包括的に行うとともに、「感染予防に有効」だという判断でリモートワーク推奨の検討を開始。どれほどのレベルでリモートワークを推奨するのか、在宅での業務が難しい部門へはどう対応するかなどを整理した上で、2月18日からは在宅勤務を推奨することとした。
「3月中旬には対策本部において、緊急事態宣言が発令されたらどう対応をするかを議論し、あらかじめ指定された例外業務や高いレベルの責任者の許可を得た社員以外は、原則的に在宅勤務に移行することを決めた。
大きかったのは、課題が見えた場合でも前向きに『こう変えよう』とクイックな意思決定ができたことと、いい意味での腰の軽さだったと思っている。例えば、在宅勤務での対応が難しい経費・伝票処理業務については、ビデオ会議システムに責任者が集まって会議を行い、できるだけ出社する人や機会を減らすにはどうルールを変更すべきかを1~2週間で決めた。その間に全員で集まったのは2回ほどだった」(佐野室長)
実際、こうした議論を通じて、通常月1回処理で申請している経費精算を臨時措置として3カ月に1回にするなどの対応を決めたという。
在宅勤務へとスムーズに移行ができた2つ目の大きな理由が、同社が進めてきた働き方改革の中でのリモートワークの推進だ。同社は2008年から、育児や介護などのプライベートな事情を抱える社員を対象にリモートワークを導入。そして、15年からは実証実験をスタートし、2016年にはリクルートホールディングスを中心に自律的に仕事ができると上長が判断した社員(一部組織を除く)にまでリモートワークの対象を広げた。しかし、もちろん最初からスムーズにリモートワークができたわけではない。
「もともとパソコンを使って業務を行う社員が多かったのでリモートワークに移行しやすかったが、社内の共有フォルダにはリモートではアクセスできないなどの問題があった。そこで2015年から支援部隊を作り、段階的に改革を進めて、仮想デスクトップ化(VDI対応)を行い、現在ではどこからでも共有フォルダにアクセスできるなど、会社と同じ環境で仕事ができる状態になっている。
もう1つ大きかったのがコミュニケーションについてだ。もともとリクルートは対面で話すのが好きな社員が多い会社で、朝会などのミーティングもたくさん行っていた。そんな中でTeamsを導入し、こちらも支援部隊を中心にチャットやオンライン会議などオンラインコミュニケーションの推進や、問題があれば改善を続けてきた歴史がある」(リクルート 働き方変革室 二葉美智子氏)