大数学者フェルマーの残したメモ
0と、0から順に1ずつ増やすか減らすと得られる数(1、2、3、……、-1、-2、-3、……)全体を整数というわけであるが、この整数について研究する数学分野のことを数論という。整数は私たちにとって馴染みの数であるのに、その性質の多くは謎に包まれている。
たとえば、nが3以上の整数のとき、x^n+y^n=z^nを満たす自然数(1以上の整数)のx、y、zは存在しない。これをフェルマーの定理という。17世紀に活躍したフランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(1607~1665)は、ある本の余白に「私はこの定理の真に素晴らしい証明を見つけたが、この余白に書くには長すぎる」というメモを残した。
しかし、現代のほとんどの数学者は、フェルマーが見つけた証明方法には間違いや不足があったのだろうと考えている。
なぜなら、この定理がイギリスの数学者アンドリュー・ワイルズ(1953~)によって実際に証明されたのは、フェルマーの死から300年以上も後の1994年のことであり、その議論は現代数学のテクニックを駆使した複雑なものであるからだ。
(本原稿は『とてつもない数学』からの抜粋です)