とりわけ影響が大きいのは、黒人殺害問題が人種差別問題への抗議となって全国的に広がったことだ。

 5月25日にミネソタ州ミネアポリス市で白人警察官によって拘束された黒人男性が首を長い時間押さえつけれられたことで窒息し、死亡したことが発端だった。

 残忍な取り押さえの状況が、通行人からSNSに投稿され、瞬く間に抗議の声が広がった。

 抗議の活動はすでに1カ月を超えている。一部には暴力的な事件にも発展し、警察と衝突することもあったが、総じてみれば平和的なデモで、すでに600を上回る都市で抗議デモが行われた。

 分断社会の中で格差拡大への不満がたまっていた上、新型コロナウイルスまん延による人々の自粛疲れやストレスが抗議行動を加速させた、という見方もある。

 広義には間違った解釈ではないが、近年、武器を持たないアフリカ系アメリカ人が警察によって殺されるなど警察による人種差別的な行動が重なってきたことが大きい。

 警察側は正当防衛を主張するが、客観的に考えても明らかに人種差別としか考えられない例が目立ち、また職務質問や各種の取り調べでも、アフリカ系アメリカ人が差別的な扱いを受けている事例も頻繁に報道されている。

 こうした警察組織への不満が今回の死亡事件で爆発し、白人の間でも同調する動きが広がった。

 抗議行動は「黒人の命が重要(“Black Lives Matter”)」と、黒色の衣服をまとい、人種差別撲滅を求める声が多いが、その次には、警察組織に解体や予算の削減を求める声だ。

強硬姿勢で保守派にアピール
バイデン候補と差別化

 だがこうした抗議活動の盛り上がりに対して、トランプ大統領は強気一辺倒だ。

 初期段階から強硬な姿勢は揺るがず、抗議行動が広がる州の知事に対しては断固たる対応を指示、ワシントンDCでの抗議行動に対しては軍の発動を主張、催涙弾でデモ行動を強制排除する一幕もあった。

 軍の発動は米国民に対して銃を突きつけることを意味し、平和的デモを行う人々に催涙弾を投げる行動はにわかには信じがたい光景だ。

 共和党支持者の間でもトランプ大統領の行動は常軌を逸しているとの声もあり、ホワイトハウスの元重鎮、マティス前国防長官も「国の分断を図る大統領だ」と痛烈な批判を浴びせた。

 しかし、肝心のトランプ大統領は気にかける風でもない。

 いや、むしろ知名度のある人物からその信条について痛烈な批判を受けることは、トランプ大統領にとってむしろ好都合なのではないか、とすら思える。