――できませんね。

常見さんは、「企業はオワコン」と言うノマドを痛烈に批判する。

 新聞や電車の中吊りジャックしてマス広告を打つみたいな、そういう大きな仕事は大企業でないとできない。もちろん、フリーランスとして、外側からプロジェクトに関わることはできるかもしれないけど、普通は難しいですよね。だからこそ、世の中は「企業がオワコン」とか言えるほど、単純じゃないですよ。

 若いうちからノマドになって、40代、50代になったときに、今のやり方を続けていれば働けない人が増えると思います。それに対して、企業は黙っていても仕事を運んできてくれるユニットだからね。

――ただ、会社員がいたり、ノマドがいたりという多様化する社会は良いと思いますけど。

 多様化はいいことだけど、多様化を目的化するのは違う。

――なるほど。どちらにせよ、これまでと比べると会社に対する不信感を抱きやすい環境にあるわけですね。そこにノマドという存在が出てきて、良くも悪くも注目を集めたのかな、と。

 そうだね。ノマドの議論の一部は僕も共感できるんですよ。確かに労働スタイルの多様性というのは設けるべきですよ。問題は多様性の実態と伝え方。

 ただ、90年代にリクルートが就職せずに夢を追いかける若者を「フリーター」と名付けて煽ったんだけど、私はどうしても、今回のノマドはあれの二の舞になるんじゃないかと思うんです。フリーターと呼ばれた人たちがその後、派遣社員となって、格差社会の被害者だと言われ続けているわけです。結果、フリーターを最初に煽った人間が問題だったと僕は思う。

――つまり、ノマドはフリーターと一緒であるということですか?

 そうだね。でも、ノマドを自称している連中に「お前らはフリーターや派遣労働者と同じじゃないか」と言うと怒るんですよ。つまり、ノマドの人たちは派遣やフリーターのように定型化・類型化されていないことを主張するからです。

 確かに類型化できない優秀なノマドもいますよ。でも、ものすごく自立しているノマドと、寄り添い合って生活しているノマドに分かれているんじゃないかというのが現状の認識ですね。

常見さんが会社員を辞めて
ノマドになった理由

――常見さんは「フリーター」という言葉を流行らせたリクルートにいらっしゃって、そこから何社か移動されて……。

 2社ですね。出向も入れたら3社ですね。今はフリーランスです。