これまでも、上司層が部下育成に熱心だったわけではない。プレーイングマネジャーが多い状況で、部下育成にそうそう時間はかけていられなかった。それでも、部下は育ってきた。

 例えば、新入社員を育てる場合、配属前に人事部門が集合研修でビジネスマナーなど基本的なことは指導してくれる。配属後は、上司や先輩が断片的とはいえ対面で指導する。加えて、新入社員は見よう見まねで仕事を覚える。その結果、上司が多くの時間をかけなくても、育ってきたというのが実態だ。

 これらの部下育成法の共通点は「対面」が前提であったことだ。しかし、テレワーク下ではその前提が消滅した。

 既に一人前になっている部下なら、テレワーク下でも、ある程度育成することは可能だろう。しかし、まだ一人前になっていない若手社員をテレワーク下で育成するのはとても難しい。とはいえ、いつまでたっても戦力化できなければ、困るのは上司だ。「対面」を前提としない環境で若手社員を育てる方法を考えなければならない。

テレワーク下の部下育成のポイント(1)
育成のゴールを設定する

 そもそも、「人を育てる」とは何をすることなのか――。これまで、そのような本質的なことは考えなくてもよかった。しかし、難しい環境下だからこそ、本質に立ち返る必要がある。

「人を育てる」とは「『こうなれば育ったと言える』という(1)ゴールを設定し、そこに向けて相手の(2)能力と(3)意識を高めていくこと」である。これは若手社員に限らず、すべての部下に対して言えることだ。

 その観点で、まずはゴール設定から考えよう。上司と部下の直接的な接点の多い環境ならば、お互いに多くの時間を共有する中で、漠然とではあってもゴールを設定することができる。しかし、接点が少ないテレワーク下では、自然にゴールをイメージすることができない。だからあらかじめ、きちんとゴールを設定しておく必要がある。

 例えば、新人営業マンならば「3年後には自分で企画書を書いて商談ができ、年間1億円の予算達成ができる」といったものが、ゴールイメージだ。そこに向けて「1年目はアポをとって、引き合いをもらって、小さな商談ならば自分一人の力で成約までできるようになる」「2年目は得意先を持って、中規模商談を一人で成約し、年間5000万円の予算達成ができる」といった中間ゴールを設定する。そして、こうしたゴールは部下との話し合いを通じ、お互いに納得した上で共有しておく。