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成長戦略の最後のピース
「B2B事業」の方向性

編集部(以下青文字):パナソニックといえば、社員が比較的気真面目で「金太郎アメ」といわれてきました。そういう社員のマインドを切り換えていかなければならないですね。

  1. パナソニック 代表取締役社長
    津賀一宏

    1956年大阪府生まれ。1979年大阪大学基礎工学部生物工学科卒業後、松下電器産業(現パナソニック)入社。1986年カリフォルニア大学サンタバーバラ校コンピュータサイエンス学科修士課程修了。マルチメディア開発センター所長、パナソニックオートモーティブシステムズ社社長、AVCネットワークス社社長、代表取締役専務などを経て、2012年6月より現職。構造改革の手腕が高く評価され、『フォーチュン』誌「2015年最優秀ビジネスパーソン」で日本人経営者として唯一、30位に選出された。

 これは、なかなか難しいですね。それを実現するためと言っては何ですが、たとえば、私のような人間が社長になりましたし、4つのカンパニーのトップは保守本流的な事業をやってこなかった人たちです。「勝手にやっとけ」みたいな事業をやっていた人たちが、いまの幹部になっている。これが、方向性を示していると思います。

 保守本流をやりすぎると、失敗できない体質になる。たとえば、テレビ事業です。一時は1兆円規模の売上げがあって、各国の販売会社はテレビを売ることに命をかけているわけですが、新しいことをして売れなくなるのは避けたいという発想になって、冒険しなくなる。そうした土壌からは、これからの時代を乗り切るリーダーは生まれにくいでしょう。

 だから、失敗を何度も経験して、傍流で痛い目に遭った人たちを経営幹部にするというのが、会社を変えていく一つの方法です。失敗をしなかった人は挑戦していない。ただし、その人に挑戦心がなかったわけではなくて、挑戦する組織風土じゃないのです。保守本流というのは、そういうところです。

 そこの部分もだいぶ変わってきたという実感はありますか。

 変わらざるをえないので、テレビ事業なんか、悲惨なぐらい変わりました(笑)。しかしその結果、やっと黒字転換しました。私がAVCネットワークス社でテレビ事業を託されたのが2011年4月からですから、5年かかってやっと黒字になりました。

 本流の部分もそういう形で意識が変わってきたので、合格点がつけられるレベルですか。

 全体としてはまだまだです。何と言っても、10兆円の旗をこんな簡単に降ろさざるをえなかったことは、ある意味でトラウマにならないかと心配するほどです。要は、パナソニックは売上げと利益の両方を追えない会社であるということをまず理解したわけです。

 それまでは、増収どころか赤字の垂れ流しを止めるのに精一杯で、それを乗り越えたけれども単純な増収増益の構図にはいかないということがわかって、10兆円の旗を降ろしたということなのです。

 じゃあ、どうするのか。これはもう手探りです。モデルや公式があるわけじゃない。ただ成長性については、着実に伸ばせるという領域は「高成長事業」として、緩やかでも増収増益を実現できる領域は「安定成長事業」として規定しました。問題は、「収益改善事業」です。ここをどう方向づけるかが当面の課題です。

 それから、「高成長事業」についても、高成長=高リスクにもなりますから、いかに挑戦しながらリスクを下げるかに注視していかなければならないので、非常に高度な“博打(ばくち)”のような面もありまして(笑)。高度と言えば聞こえはいいですが、何せ博打ですから、腹の据わった人に任せたいですね。

そうすると一朝一夕に何点くらいまで来たというのは難しいですね。

 難しいです。家電事業は海外の白物でまだまだ成長できる。車載事業は快適・安全・環境という3つの要素で伸ばしていける。住宅は、非常にローカルな事業ではあるけれど、日本は高齢社会や住宅資産の再活用、また東南アジアでは新築家屋を造成から求める人たちが多いなど、国や地域ごとにまだまだニーズはある。この3つは伸ばしていけるので、後はサービス産業に向き合う「B2B」事業をパナソニックの中でどのように定義して、リソースをどこにどれだけ配分し継承していくか。今年度中には決めなければならないと考えています。

 これができれば、後はおのおのの戦略が、オペレーションのフェーズでうまく回っていくのを見ていくだけです。

津賀さんの一連の改革の経過を見ていますと、メリハリが半年ごとに効いていますよね。

 せっかちなんですよ(笑)。ほんとは半年でも長いと思う。

 そうでないと世界のスピードに追いつきませんものね。

 実際にお客様に、新しい商品をお買い上げいただくまでに時間がかかるのは理解できますが、どっちの方向を目指すのかを決めるだけなのに、時間がかかるのは理解できません。早くやり切ります。