わが国自動車産業の対応と
今後の展開

 逆の視点からテスラの株価上昇を考えると、わが国の自動車産業がCASEをはじめとする変化にうまく対応できるか、懸念を抱く投資家は少なからず存在するとみられる。わが国の自動車メーカーについて考えると、今後数年はコロナショックによるペントアップ・ディマンドなどが業績を下支えするだろう。

 しかし、ペントアップ・ディマンドだけで、わが国自動車産業すべてが生き残ることは難しいだろう。重要なことは、わが国の自動車産業が変化への対応力を高め、発揮できるか否かだ。

 わが国の自動車産業は、高度な組み合わせ技術を磨き、低燃費や耐用年数の長期化を実現した。それが世界の需要を取り込み、自動車産業の成長を支えた。しかし、EVやCASEの技術開発が進む中、わが国自動車産業の強みである高度な組み合わせ技術だけでは、生き残りの十分な条件にはならない。

 EVに必要とされる部品点数はガソリン車の半分程度で済み、組み合わせ技術は自動車の性能を左右する主たる要因ではなくなるからだ。各自動車メーカーやサプライヤーに必要なのは、過去の成功体験を捨てて、国内外の知見を生かしてゼロから新しい発想を生み出し、その実用化を支える技術を創出することだ。その重要性は秒進分歩の勢いで高まっている。

 わが国経済は裾野の広い自動車産業の技術開発に支えられて成長してきた。今後、わが国の自動車産業がCASEや都市空間の一部としての自動車の役割発揮といった変化に対応できなくなると、経済成長率は低迷する恐れがある。反対に、変化にうまく対応できれば、わが国の自動車産業が「100年に一度」と呼ばれる大変革期を生き抜き、持続的な成長を目指すことはできるはずだ。

 わが国自動車産業は、自動車に限らず広範囲な知見を総動員して、変化に対応する体制を整えなければならない。それができれば、わが国経済が自動車産業を中心に先端分野での技術を開発し、技術先進国として世界から必要とされる存在を目指すことができるだろう。その意味においてわが国自動車産業は、持続的な成長を目指すことができるか否か、重大な局面を迎えている。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)