超大手の企業トップは
詐欺師にだまされやすい

 そこで、現地に行けば何かわかるかもしれないと思い、実際に行ってみた。

 ビル1階にあるのは日本郵船のエントランスのほかは「ROLEX」「中国農業銀行東京支店」、中東の巨大企業「アブドゥルラティフジャミール」と大手レンタルオフィス「サーブコープ」の受付だ。

 アジア経済協力会議所はレンタルオフィスに入居していたというから、おそらくサーブコープと契約していたに違いない。だが、サーブコープを利用する数十の法人のひとつが郵船ビル全体を所有するなどありえないと思うのが社会人の良識だろう。M資金詐欺の成功例を見ると「ウソは大きいほうがいい」というのが正しいことがよくわかる。

 実はM資金詐欺を成功させるにはコツがある。詳しい人物によれば「ターゲットは超大手企業の代表取締役限定」だという。サラリーマン経営者かオーナー経営者かは関係ない。とにかく誰でも知っているような大企業の代表取締役だけを狙う。

 これらの人たちは成功の過程で「自分は特別に選ばれた存在で、それにふさわしい偉大な役割と権利がある」など強く信じる傾向があるのだという。詐欺師はその自尊心を巧みにくすぐるから被害者が絶えないのだ。

 親族名義や資産管理会社の分も含めると蔵人会長の保有するコロワイド株の時価は238億円(7月20日終値ベース)。30億円取られたところで蚊に刺された程度なのかもしれない。恥ずかしくて詐欺被害にあったことを名乗り出られない経営者が多い中で、詐欺師を野放しにしてはならないと告訴に踏み切ったのはある意味立派といえる。

 しかし、週刊誌報道が出たことで大戸屋ホールディングスへの敵対的TOBにはマイナスに作用するのは間違いないだろう。大戸屋の一般株主は蔵人会長の経営者としての見識を疑うからだ。

 また、取引行の一部は今回の詐欺被害について知らされていなかったという。一般論だが、銀行は悪い情報を隠そうとする経営者を信用しない。

 なお、コロワイドはダイヤモンド編集部からの質問について「警察が捜査中であり、また、個人のことなので回答できない」とコメントしている。

 コロワイドはいまのところ週刊誌報道を黙殺しているようだが、今回逮捕された3人が起訴されれば、法廷で起訴状が朗読される際、被害者はおのずとバレる。それでも引き続きコロワイドのかじ取りを行うつもりであれば、説得力のある説明が求められるだろう。