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小学1年生だって起業家になれると聞いたら驚くだろうか。これはけっして冗談ではない。起業の基本が「せどり」であることを理解すれば、誰だって起業家になることができる。成功した多くのベンチャー企業は、実は「せどり」の発想から始まっている──そんな目からウロコの考えを主張するのは若手NO.1ベンチャーキャピタリスト・佐俣アンリだ。
彼のデビュー著作『僕は君の「熱」に投資しよう――ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義』は、生き方に迷う「若者たち」を圧倒的に肯定し、徹底的に挑発する、仕事論の新しいバイブルといえる。
この本を読んだことがきっかけとなり、新時代のSONY、次のメルカリ、そして、今は誰も想像すらできない「未来の会社」が生まれるかもしれない。
読者対象は起業を目指す人だけではない。スポーツでもアートでも、趣味でも社会活動でも、もちろん目の前の仕事にでも、「熱」をもってチャレンジするすべての人に向け、その熱を100%ぶつけて生きてほしいという願いを込めてこの本は書かれた。
ノウハウ本でも成功本でもなく、ただ「熱」をもつ人の暴走本能を刺激する本だ。
「熱を抱えた投資家として、たくさんの熱を見て、応援して、大成功も大失敗も見てきた自分がいまわかることをすべて詰め込んだ」と著者が語る同書のなかから、この連載では特に熱い部分を紹介していきたい。第4回は、起業の基本である「せどり」について!

エアビーもウーバーも、
みんな最初は「せどり」だった

 前回の記事で僕は、起業家こそダントツでオススメの人生の選択肢だと言った。「とはいっても、起業するにはアイデアがないと……」と誰もが最初に思うものだ。難しく考えるな。そんな君に、こんな小学1年生の言葉を贈ろう。

「ごみでもかんがえたらうれる」

 少し前、ある小学1年生の少年が「シーグラス」をメルカリで販売し、ネットメディア『バズフィード』で紹介されるほど話題になった。シーグラスというのは、海に捨てられた瓶などのガラスが、波によって砂や岩で削られ、美しい石のようになったもののことを言う。

 この少年は香川で出会った漁師に、「シーグラスが高く売れる」ということを教わって、それを実際にメルカリで1000円で売ってみせた。

 この少年の行動こそが、起業家にとって必要な唯一のスキルと言ってもいい。

 起業に興味がある人ほど、メディアの報道や起業セミナーを真に受けてしまって、始める前に二の足を踏む。難しく考えず、まずはメルカリでガラクタを売ることから始めればいい。小学1年生でもできるんだ。楽勝だろ?

 起業、さらには事業をつくるうえで重要なことは、世の中にある「価値のズレ」に気づくことだ。

 起業の基本的な原理は、古本の販売などに代表される「せどり(背取り)」だろう。せどりとは、掘り出し物を安く見つけて、高く売り、利益(差益)を得る商売法だ。

 せどりをするためにはまず、世の中で価値がズレているものに気づかなくてはならない。たとえば近所の古本屋で見つけた100円の古本が、アマゾンじゃ1000円で売られていたりする。こうした価値のズレだ。

 シーグラスなんてどこの浜辺にでもある「ごみ」だ。あの少年はそれをメルカリで売れば価値が出ることを知り、実際に利益を出した。せどりとはつまり、世の中では価値が無い(もしくは価値が低い)とされているものに気づき、価値が出る場所で売って利益(差益)を得ることだ。

 たとえば民泊サービスの「Airbnb(以下、エアビー)」や、タクシーの概念を変えたサービス「Uber(以下、ウーバー)」も、ここ10年間でもっとも成功したスタートアップ、と言うと仰々しいが、商売の原理的には単なるせどりだ。

 エアビーは、世界最大手の「民泊サイト」である。登録すれば、誰でも自分の家を貸すことができるし、世界中の人の家に泊まることができる。サービスは世界220カ国以上へ展開され、登録されている宿泊場所は700万件以上になる(2020年6月現在)。

 現在はフェイスブックやインスタグラムを通して、友達がエアビーの宿泊先で楽しそうに交流している様子を見ることはさほど珍しいことではなくなった。

 しかしエアビーが創業された当時は、誰もが最悪のビジネスモデルとしか思えないものだった。考えてもみてくれ、いつの間に「赤の他人の家でも人はお金を出して泊まる」なんてことがあたりまえになったんだ?

 このアイデアが生まれたのは2007年。のちにエアビーを共同創業することになるジョー・ゲビアとブライアン・チェスキーは、ある日、サンフランシスコにある自宅のアパートをインターネットを通じて貸し出すことを思いつく。

 その当時、地元で大きなイベントがあり、周囲の宿泊施設が満杯になっていた。インターネットで呼びかければ、誰かがお金を払って泊まりに来るのではないかと考えたのだ。

 すると瞬く間に借り手が見つかり、得られた宿泊料は意外な収入になった。

 言ってみれば、なんの価値もない自分の家を臨時のホテルとして売ってみたら、買い手がついたということだ。

 つまりエアビーの始まりは、誰にでもできるせどりだったのだ。

 彼らはこの小さな成功を仮説とし、2008年にエアビーを創業したわけだが、まともな投資家ならプレゼンを聞いて爆笑し、こう言ったに違いない。

「君の家に見知らぬ誰かが泊まりに来たからって、どうしてそれがビジネスチャンスの根拠になるんだ?」

 もともとタクシーサービスが充実している日本では馴染みのないウーバーだが、海外に行けばその普及率には驚かされる。すでにウーバーがなければ毎日の通勤など、欠かせない移動に大幅な支障をきたす市民が続出するだろう。

 ウーバーは2009年、トラヴィス・カラニックとギャレット・キャンプが資本金20万ドルで創業している。そのきっかけは、2008年の雪が降るパリの夕方、ふたりがタクシーをつかまえられずに困っていたときに、アプリのボタンをタップするだけで車を呼ぶことができたら便利だろうと考えたことだった。

 アイデアとしては以上。驚くほどに単純で大胆だ。

 このアイデアも、言ってみればせどりだ。考えてもみろ、2009年当時、ヒッチハイカーでもなければ、誰がタクシーの代わりに他人の車にお金を出して乗ろうと思うだろう?

 しかし結果的に彼らのせどりは成功した。それも世の中の移動の価値体系に大きな影響を与えるほどの大成功だ。今や人がその乗り物のことをタクシーと呼ばず、「ウーバー」と呼ぶようになったことがその証拠だ。

「起業のアイデア」ではなく、「世の中の価値のズレを見つける」「せどりのアイデアを考える」となれば、誰でも思いつきそうなものだ。

 起業は、まずそうしたハードルの低いところから始めていくのが、無駄に二の足を踏まないコツと言えるだろう。