生き方に迷う「若者たち」を圧倒的に肯定し、徹底的に挑発する、仕事論の新しいバイブルが誕生した。国内最大のシードファンド(300億円)を運営する、36歳、若手NO.1ベンチャーキャピタリスト・佐俣アンリのデビュー著作『僕は君の「熱」に投資しよう――ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義』だ。
この本を読んだことがきっかけとなり、新時代のSONY、次のメルカリ、そして、今は誰も想像すらできない「未来の会社」が生まれるかもしれない。
対象は起業を目指す人だけではない。スポーツでもアートでも、趣味でも社会活動でも、もちろん目の前の仕事にでも、「熱」をもってチャレンジするすべての人に向け、その熱を100%ぶつけて生きてほしいという願いを込めて本書は書かれた。
ノウハウ本でも成功本でもなく、ただ「熱」をもつ人の暴走本能を刺激する本だ。
「熱を抱えた投資家として、たくさんの熱を見て、応援して、大成功も大失敗も見てきた自分がいまわかることをすべて詰め込んだ」と著者が語る本書のなかから、この連載では特に熱い部分を紹介していきたい。第3回は、誰も知らない起業の魅力について!
起業とは、夢を「見続ける」生き方
前回の記事で、熱をぶつける先はなんだっていい、と言ったが、ダントツで僕が勧めるのは、やはり起業だ。
熱を持った若者にとって起業は圧倒的に「コスパがいい」からだ。
君に青年の僕が持っていたような熱があるなら、一度はやってみるべきだ。
起業は熱だけでできるし、活躍するプロ野球選手並みの金銭的成功すら狙うことができる。起業とは、実はローリスク・ハイリターンなゲームなんだ。失敗しても、君の熱と若かりし日々の一部が消えるだけ。他に失うものは特にない。
一方でプロ野球選手の人生は、ハイリスク・ハイリターンなゲームの代表格だろう。
まず、ほとんどのプロ野球選手は小学校くらいから野球に人生を捧げ、その後、中学校の全国大会、高校の甲子園、その成果によってドラフトで選ばれなければプロへの道はほぼない。
晴れてプロ球団へ入団できても、同僚は小学校から第一線で活躍を続けたサラブレッドばかりだ。この中でさらに頭ひとつ抜き出た成功をするためには、単なる野球ゲームではなく、「体格ゲーム」を戦わなければならない。野球選手は、最後には体格がモノを言う。ダルビッシュや大谷が大リーグで戦うことができるのは、尋常ではない精神力と努力、そして奇跡的に配列されたDNAによって生物学的に体格が他の選手を凌駕しているからだ。
さらにプロ野球選手は万が一、致命的なケガをしたら「それまで」だ。もしもそのタイミングが20代半ばであれば、その後の人生に一切の保証はなくなる。30歳を越えたら何年続けられるかわからない。引退ということになれば、野球しかない人生の偏りが、ボディーブローのように効いてくる。人生を野球に捧げてきた人から野球がなくなれば、ただの一般人以下だからだ。
コーチや解説者になれる人はほんの一握り。引退後、突然、年収100万円台の世界に転落するリスクすらあるだろう。
しかし起業というのは、とくにアプリ開発などのインターネット事業の場合、ほとんど元手ゼロのド素人で、今、この瞬間からでも始められる、超ローリスクのゲームだ。
もちろん開発のためのパソコンやインターネット、プログラミングの知識は必要になるが、機材はフリマアプリなどで格安で入手できるし、プログラミングは今や子ども向けの教育講座があるくらいだ。少しググれば無料のテキストや格安のオンライン講座がある。
モノを売りたければメルカリ、ウェブサイトがつくりたければ制作サービスも格安のものがある。起業するために必要なツールやノウハウはすべてインターネット上にあると思っておいて間違いないだろう。
さらに「ほどほどの成功」で人並みに食っていくこともできる。
みな起業家と聞けば、サイバーエージェントの藤田晋やメルカリの山田進太郎などの大御所を想像しすぎるきらいがある。彼らは言ってみれば、大リーガーのようなものだ。彼らのような人だけが起業家ではない。
起業とは事業を起こすことに他ならない。世の中には、誰も気づかないほどニッチな事業で巨万の富を得ている起業家もいれば、ほどほどの収益だが、自分の趣味と仕事を両立できるような事業を行い、人生を楽しんでいる起業家もいる。
人に称賛されるような大成功をしなくても、人知れずほどほどの成功さえしていれば食っていくことができる。
プロ野球選手などのように戦力外通告があるわけでもなければケガをしたら終わりということもない。年齢制限もない。うまくいかなければ事業を変え、また成功を追いかけることができる。
さらに、仮に起業家の人生を諦めたときでさえも、培ったプログラミングスキルはエンジニアとして、経営のスキルと人脈はプロジェクトマネジメントやディレクターとして、既存の企業で十分に活用できる自分だけの財産となる。
そして成功して得られるハイリターンは、君の想像を超える。巨万の富や社会的地位はもちろん、この世界を動かす力を手に入れることすらできるかもしれない。
いいか、起業というのはもはや職業ではない。
いわば終わらない夢を見せてくれる、生き方なんだ。
人生には夢が大事だと大人は誰でも言う。そして夢は誰でも見ることができる。プロ野球選手を夢見たっていい。歌手を夢見たっていい。君の自由だ。
しかし、夢に生きることを選択肢として君の人生のテーブルに並べたとき、その夢を「見続けられるかどうか」は重要な判断基準にならないだろうか? 夢は見ることより、見続けられることのほうがはるかに重要だ。その点で起業家は、非常に良い選択肢になる。
起業は果てしない夢などではなく、君にどうしようもない熱があるなら、人生において一度は選んでおいて損はない、ただの選択肢のひとつなんだ。
1984年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。松山太河氏がパートナーを務める「EastVentures」にてFreakOut、CAMPFIRE等への投資及び創業支援を経て、2012年「ANRI」を27歳で設立。独立系ベンチャーキャピタルとして、主にインターネットとディープテック領域の約120社に投資している。VCの頂点をめざし、シードファンドとして国内最大となる300億円のファンドを運営中。現在の主な投資先は、LayerX、NOT A HOTEL、hey、Mirrativ、アル、Rentioなど。
2017年には、ビル一棟を使ってスタートアップを支援するインキュベーション施設「Good Morning Building by anri」を渋谷にオープン。投資先ベンチャーのオフィス、ミーティングルームやカフェなどがあり、ANRIを中心としたコミュニティが形成され、起業家のアジト、梁山泊の様相を呈している。日本ベンチャーキャピタル協会理事。ツイッターは@Anrit