ラグビー日本代表の活躍と国民の熱狂ぶりを目にしながら、「ONE TEAM」という精神は、日本人の中に根付いた行動原理の一つだと改めて確認することができた。ただ、考えてみるとこの原理はプラスに働くこともあれば、マイナスに働くこともある。
最近でいえば、プラスに働いたのがまさにラグビー日本代表の活躍であり、マイナスに働いたのがコロナ禍での自粛警察やマスク警察ではないかと考えている。その同調圧力が半端でないことは、多くの読者も実感しているはずだ。
じつは、戦前も同じようなことがあった。軍国主義に突き進んだ挙国一致政策だ。「欲しがりません勝つまでは」、「ぜいたくは敵だ」という言葉は有名だが、これは、戦時中に戦意高揚のために新聞各社と大政翼賛会が主催して国民から公募した「国民決意の標語」だ。
そして、ほとんどの国民は、この標語を遵守し、つましい勤倹生活をまじめに送ったが、一方でそれを守らない人々を「皆ががんばっているのに、なぜ勝手な行動をするのか」と激しく攻撃した。中には「町会決議により、パーマネントの方は当町の通行をご遠慮下さい」と立て看板を掲げた町も出てくる始末だった。
今回は、団結を重んじる一方、他人の自由を許さない日本人の行動原理を歴史的に考察していこうと思う。
いつの時代も「合議制」を貫いてきた日本の政治体制
聖徳太子(厩戸王)が定めたとされる憲法十七条(六〇四年)は、「和(やわらぎ)を以て貴しとなし、忤(さか)ふること無きを宗(むね)と為よ(和を尊び、人に逆らわないようにしなさい)」という条文があまりに有名なものだから、「和」というものの大切さを人々に説いたのだというイメージが定着してしまっている。しかし、それは間違いだ。
憲法十七条は、大和政権の豪族たちに出された通達であり、中国の隋のように天皇(皇帝)のもとに権力を集めて支配を秩序づけ、豪族たちに国家の官僚としての自覚を求めたものである。また、憲法十七条には「それ事は独り断(さだ)むべからず。必ず衆(もろもろ)とともに宜しく論(あげつら)ふべし(物事は独断で決めるな。必ず皆と議論して決めなさい)」という一文があるが、これも、特定の豪族による専横を諫めたものだ。