ライフサイクルアセスメント(LCA)
という考え方

 ここで気をつけなければならない点は、車両製造段階、エネルギー製造段階、走行段階のすべてを加味したLCA視点によるCO2排出量の計算結果は、必ずしも回答はひとつではないことだ。どのようなデータを使用するかで変わる。

 さらに、厳密にLCAを計算するとなると、車両の廃棄・解体段階でのエネルギー消費も含めなければならない。VWはそこまでは公表していないが、重要なヒントとなるデータを公開している。ID.3を1台製造する場合のCO2排出分担である。

 ID.3はゴルフとほぼ同じサイズのCセグメント乗用車だが、車両重量は航続距離330kmの標準仕様で約1.7トン。ゴルフのエンジン車比で約300㎏重い。重量がかさむ主な理由は、LiB(リチウムイオンバッテリー)である。

 VWは「ID.3はカーボンニュートラル生産」と説明しているが、それは植林などを行って最終的に再計算した時点でのカーボンニュートラルであり、素材や部品別にCO2排出比率を見ると、ボディなどに使われる鋼材(スチール)は18.4%、エンジンやサスペンションなどの鋳物に使われるアルミ合金は5.7%、電動モーターは4.8%、モーター内に使われる磁石は2.2%、インパネなどの樹脂部品は3.3%、貴金属類とガラスはそれぞれ1.3%である。そして注目は、車両製造段階で発生する43.3%がLiB製造時に発生する点だ。

 製造段階でCO2発生量が多い素材や部品は、分解して再び資源としてリサイクルする場合のCO2発生量も傾向として多くなるというデータがある。LiBのような化学反応電池を大量に搭載するBEVは、廃棄・再利用までを含めたLCA計算をすると、かなり不利になる。

ドイツ政府は
BEVの購入補助金を増額

 しかし、今年5月にドイツ政府は、COVID-19で落ち込んだGDPを押し上げるための経済対策について、自動車分野ではBEV補助金に集中し、通常エンジン車への購入支援は見送った。車両価格4万ユーロ以下のBEVへの補助金を9000ユーロ(約109万円)に増額したが、ガソリン車とディーゼル車については自動車業界の要望を却下し、スクラップインセンティブ(新車に買い替えた場合の補助金)を採用しなかった。