とはいえ「退学して働く」という選択肢も事実上塞がれている。そもそも困難な中卒での就職を、さらにコロナ禍が直撃しているからだ。すでに高校を退学してしまった子どもたちを支援から取りこぼさないために、「あすのば」の緊急支援は、対象を「高校生」ではなく「高校生世代」としている。

「バイト先が廃業したり休業となったりしたので、収入面で不安があります。心境としては、『コロナで死ぬか、社会で死ぬか』だと思います」

 非正規雇用は、当初から「景気の調整弁」という役割がある。アルバイトの高校生世代も例外ではない。アルバイトが減っても支えられる家庭があればよいのだが、もともと、そうではなかったからアルバイトせざるを得なかったはずである。さらに、コロナ禍は家庭も直撃しているだろう。

 高校を卒業した後の新生活も、コロナ禍の打撃を受けることになる。

「今春、高校を卒業しました。日本文化を外国人観光客に伝えることを業務としている地元企業に内定していたのですが、内定が取り消しになりました。アルバイトも十分にはできず、家にお金を入れることができない状態で、時間だけが過ぎてしまいます」

高校新卒者の求人は激減
保護者からも悲痛な叫び

 不況になると、高校新卒者対象の求人は、大学新卒者よりも深刻に減少する。内定取り消しに遭った高校卒業者が、来年度の新スタートを期することは、困難だろう。

 保護者からも、「高校の通学費が出せない」「子どもの部活を続けさせてやれなくなりそう」「減収し、子どもたちは休校で家にいるので、公共料金やオンライン授業の通信費がかさんで大変困っています」といった悲痛なメッセージが、数多く寄せられている。

 子どもの貧困とその解消に長年にわたって取り組んでいる小河さんは、1995年の阪神淡路大震災も2011年の東日本大震災も経験してきた。しかし、コロナ禍が子どもたちの育ちと暮らしと学びに与える影響は、小河さんにとっても想定外であったようだ。