良いインターンシップは
「フレームワーク型」

 ひたすら自社のいいところをまくしたてる「プロパガンダ型」の対極にあるのが、学生に物事を考える枠組みを与える「フレームワーク型」のインターンシップです。

 サマーインターンシップに参加する学生は、まだ業界や企業全般についての知識が浅く、人気がある、大手である、給料がよい、といった程度のごく表面的な部分しか見えていません。企業の本質や強みをさまざまな角度から見抜くリテラシーがないということです。学生の中に企業を測る物差しがないということは、逆から見れば、企業側が自社の強みを印象づけるフレームワークを学生に与えることがインターンシップ成功の鍵になるということです。

 例を挙げて説明しましょう。

 皆さんは伝統調味料を製造する老舗企業と大手金融機関ではどちらがいい企業だと思うでしょうか。もちろん、人それぞれ価値観や考え方はさまざまで、正解はありません。例えば前者が「私たちは太古の昔から人々の『食』に寄り添ってきた、伝統調味料をつくっています。それはまさに人の歴史、生活、文化そのものです。そしてこの調味料はいまだに毎日の食事に欠かせない必需品です。人々の毎日の生活を支え、日本文化と歴史を支え、いまや世界にも広がりつつあるのです」というような価値観を学生に植え付けたとしたらどうでしょう。

 それまで、給与、知名度、規模くらいのことしか考えていなかった学生は、人の生活、文化や歴史に根差しているという企業活動の奥行きの深さを知って、もはやそれ以後、ほかの企業を見るときには、単に給与や規模を比較するだけでは満足できなくなります。企業活動がどのような意味を持っているのか、最初に聞いた伝統調味料をつくっている会社ほどの歴史や文化に根差した「深さ」があるのかどうかを気にするに違いありません。そのような企業の独自の価値を測る「フレームワーク」が学生の中にできれば成功です。

 学生がいろいろな会社を回り、最初に与えられた「フレームワーク」に従って企業を比較すると、どうしてもそれを与えてくれた企業がよく見えるものです。その企業が自社の強みを打ち出してつくった「フレームワーク」なので、ちょっとやそっとでは他の企業に負けるわけがありません。サケが生まれた川に戻ってくるように、「フレームワーク」を与えた企業に学生が最終的に帰ってくる確率が格段に高くなるのです。

 私は企業の採用担当者からインターンシップの企画についてご相談いただくと、必ず「学生はまだ企業判断のための『フレームワーク』を持っていないので、それをつくりましょう」とご提案することにしています。なお、「フレームワーク」を与えられた学生は、そのインターンシップを充実したものだと捉え、満足度も高くなります。

 従来は、実際に企業の中に入って先輩と一緒にグループワークをさせたり、通常は行けない場所に連れていったり、企業のとっておきの人材に会わせたりすることが、「フレームワーク」づくりの一環になっていました。もちろん今でも、その企業でなければ会えない人との会合をオンライン会議で設定することは可能ですし、実際に工場や一般の人が入れない作業領域などを見せることも可能です。前述した自社の強みからつくる「フレームワーク」とそれらをうまく組み合わせればよいでしょう。