しかし、今後5年~10年の期間で、女性の貧困が解消されることは期待できないだろう。そして本計画素案には、男女の就労収入格差をドラスティックに減らす方策が具体的に示されているわけではない。すると、どうしても「貧困解消のためには現金給付が必要」ということになる。

女性と子どもの貧困解消のカギは
就労支援と養育費?

 ところが本計画素案には、現金給付に関する記述が、ほとんど見当たらない。

 高齢期の低年金・無年金は、特に高齢女性にとって深刻な問題だ。このことは「高齢期の女性の貧困」の背景として述べられている。ところが、解消するための具体的な施策として例示されているのは、2019年10月、消費税が10%に引き上げられた際に導入された「年金生活者支援給付金制度」、すなわち、消費税引き上げに対応した上乗せ分のみである。

 老齢年金そのものの給付水準に関する記述や、低年金・無年金を補完する役割を担っている生活保護に関する記述は、どこにも見当たらない。その代わりに目立つのは、「年齢に関わりなく働ける」ことや、そのための「健康寿命延伸」である。

 ひとり親世帯、特にシングルマザー世帯に対しては、「相談窓口」「子どもの学習支援」「居場所」「親の資格取得」といった方向性が挙げられている。出産や育児は、就労や就労継続の阻害要因となりうるが、その問題は「子育て女性に対するきめ細やかな就労支援」で解消する見通しである。

 離別したシングルマザーに対しては、「養育費の取り決め等も促進」するという。方法は、動画やパンフレットで「効率的な周知・啓発」を行うことであるという。しかし、母親と子どもの貧困が就労と養育費で解消できるというのなら、日本に貧困シングルマザーは存在しなくなっているだろう。日本のシングルマザーの就労率は、戦後ずっと80~90%という高い水準で推移している。養育費は、相手に一定の資力がなければ期待できない。