列島明暗 都市・地方財界・名門企業#8Photo:JIJI

創業200年以上の老舗である静岡の超名門、鈴与グループをコロナショックが直撃した。8代目鈴木与平会長が名を懸けた航空会社、フジドリームエアラインズが“大赤字”に転落した。盤石とされる鈴与グループに崩壊の危機を招くかもしれない。特集『列島明暗 都市・地方財界・名門企業』(全15回)の#8では、静岡の超名門企業、鈴与グループに迫る危機を追った。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

創業から200年超
静岡の陸・海・空を手中に収める“王国”

 静岡県といえば、“キング・カズ”こと三浦知良や“ゴン”が愛称の中山雅史、長谷部誠らサッカーの日本代表選手を多く輩出してきたサッカー王国である。

 そして静岡県には、江戸時代から200年以上も続くもう一つの“王国”がある。静岡・清水を拠点にする鈴与グループだ。地元で知らない人はいない超名門企業である。

 鈴与グループは1801年、現在の清水港である清水湊の廻船問屋として播磨屋与平が創業した。現在は8代目を襲名する鈴木与平会長が30年以上、グループの陣頭指揮を執る。

 幕末、明治、昭和と港の発展に合わせるように事業を拡大し、現在は静岡県内の物流事業を中心にエネルギー、建設、食品など140社を超えるグループ会社を抱えるコングロマリットになった。サッカーJ1の清水エスパルスや静岡理工科大学の運営も支援している。鈴与グループの売上高は4000億円を超え、県内ではスズキ、ヤマハ発動機に次ぐ規模だ。

 そして、鈴与“王国”の総仕上げが航空事業への参入である。

 2009年の静岡空港開港に合わせ、08年にフジドリームエアラインズ(FDA)を設立。これで王国を築く「ラストピース」が埋まり、鈴与グループは静岡の“陸・海・空”の全てを手中に収めた。

 ところが、である。地元では超盤石といわれる鈴与グループでも、コロナショックからは逃れられなかった。特にダメージを受けたのは、鈴木会長が大勝負に出たFDA。「大赤字」に転落したのだ。