株価が二極化の傾向をたどる中、投資リターンの有効なファクターと指摘されているのがROE(自己資本利益率)と自己資本比率の高さだ。そこで、実績・予想とも高ROEで自己資本も厚い企業をスクリーニングし、「攻めにも守りにも強い」銘柄を炙り出した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

「週刊ダイヤモンド」2020年9月12日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

ROEが高い企業の株価は
パフォーマンスが良好

 新型コロナウイルスの感染拡大への対応として、FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめ世界の主要中央銀行が前代未聞の大規模な金融緩和を行い、市場に資金を供給している。これが景気を下支えしつつ、市場に余剰資金が流れ込み、株高をも促している。

 株式市場の個別銘柄に目を向けると、投資家からの評価が高い銘柄には買いが集まる一方、業態の先行きや財務面などに不安のある銘柄は大きく売られるといった二極化の動きが見られてきた。

 こうした中で、株価の変動要因を統計的に調べるファクター分析を行っている智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジストによると、特に2020年以降、ROE(自己資本利益率)の高い企業の株価パフォーマンスは良好な状態にある。

 ROEとは、企業の自己資本に対する純利益の割合を示す。数値が高いほど、自己資本を効率的に使って利益を稼ぎ出す力があるということだ。

 大川氏の分析によれば、単純に「ROEの実績値が高い」という条件だけでも一定の株高を生み出す効果が見られてきたが、先行きの「予想ROEも高い」銘柄ではさらに投資リターンが良くなる傾向も見られるという。

コロナ禍に苦しめられる中で
財務健全性にも脚光

 もう一つ、数年単位で高いパフォーマンスを発揮しているファクターが、「自己資本比率」の高さだ。

 自己資本比率とは、自己資本を総資産で割ったもの。自己資本は剰余金など現金化しやすい資産を多く含んでおり、この比率が高いと財務の健全性も高いといえる。

 好況時の場合、豊富な自己資本を持つ企業は、財務レバレッジ(てこ)を利かせて積極投資に動く企業よりも資本効率が悪いとして、市場の評価は低くなりやすい。実際、02~07年ごろは景気が拡大する中、自己資本比率が高い企業の株価は低調だった。

 一方、一般的にアベノミクス以降は好況だったとされるが、大川氏の分析によれば、リスク回避の典型的なファクターである自己資本比率の投資効果は13年以降に高まっている。

 これは、実はその間、景気が良くなかった可能性を示唆している。大規模な金融緩和など官製マネー主導で資産価格は押し上げられたものの、実体経済の足取りは鈍かったというわけだ。

 つまり、高ROE銘柄は長らく優れたパフォーマンスを発揮してきたが、コロナ禍に苦しむ現在のようなご時世では、財務健全性にも投資家の関心が向かいやすい。

 今後もこれらのファクターが他の銘柄群より投資リターンが良くなる保証はないが、不況下の過剰流動性に基づく株高の中では、質の高い銘柄に資金が集中する傾向は当面続きそうだ。

 そこで、実績ROEより予想ROEが高く、自己資本も厚い企業をスクリーニングしたのが下表だ。いわば「攻めにも守りにも強い」銘柄だけに、投資時の参考にしてみてほしい。

【高ROEランキングの算出方法・見方】
●対象は東証一部上場企業のうち、コンセンサス予想が取得でき、業績が赤字(実績、予想共に)のものを除外した銘柄。
●これらについて過去の実績ROEと予想ROEを比較した際、予想ROEの方が大きい銘柄を対象に、予想ROEと実績の自己資本比率でスコア化し、その平均スコアの高い順に並べた。
●平均スコアは、ROEと自己資本比率について、母集団における各ファクターのパーセンタイルスコア(最上位を100%、最下位を0%としたときに全体の中の何%に位置するのか)を平均したもの。

*予想ROEと予想PERはIBESの12カ月先コンセンサス予想値、ROEと自己資本比率の実績は過去12カ月の実績値。HDはホールディングスの略。ランキングは8月下旬時点のDatastreamのデータを基に智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジスト作成

Graphic:Daddy's Home

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