という話をしても、「いや、確かにコンビニ強盗はそうかもしれないが、農耕民族の我々には、他人が手塩にかけて育てた農作物を盗むなんて文化はない。罪悪感なしにこういう犯罪ができるのは、騎馬系民族の発想だ!」と食い下がる、愛国心あふれる人も多いかもしれない。しかし残念ながら、農作物や家畜を盗むというのはほぼ全世界に共通する、人類の極めてトラディショナルな犯罪であり、それは日本人も例外ではない。

日本社会でも「野菜泥棒」は
延々と続く犯罪だった

「野荒らし」という言葉があるように、日本でも昔から野菜泥棒は存在している。見つけるとみんなでリンチしたなどという記録もある。こういう社会病理は近代になってからも引き継がれ、「善良な市民」がちょいちょい畑から野菜をくすねていた。たとえば、1941年7月23日の『読売新聞』には、「野菜盗人を取締れ」という投書が掲載されている。

「盗人は近頃落ち込んで来た工員の勤務者に、次いで裕福な家庭の御夫人連に多いのは意外だ。それに日曜の散策に出向く都会人種がある。かれらの図々しさといつたら百姓の注意ぐらいで手を引つ込めるようなウブなのはいない」

 当時は国家総動員体制下で、米の配給制度もスタートして、「勝利のためにも日本人は1つになって助け合おう」と、盛んに呼びかけがなされていた。そんな有事の際にも、「野菜泥棒」に走る人間が一定数いた。東日本大震災の被災地に、空き巣が出たのと同じである。

 つまり、日本人にとって「野菜泥棒」は延々と続いてきた、かなりメジャーな犯罪だったのである。それが近年になって増えており、外国人による犯行が目立ってきているのも事実だが、この古典的犯罪のすべてを彼らに押し付けて、「日本人はそんな卑怯な真似はしない」というのは、あまりにも都合がよすぎないか。

 そこで、この問題を考える上で重要なのは、なぜ「野菜泥棒」に手を染める日本人がここにきて急速に増えているのかということだが、個人的には、現代社会の中で数多くある違法行為の中でもかなり「低リスク」な部類に入ることが大きいと思っている。

 2018年、農林水産省が警察庁の協力を受けて、野菜泥棒の被害件数の多い23道府県の市町村やJAなど218団体に聞き取り調査を行った。そこで「盗難被害がある」と答えた70組織から、衝撃的な事実が浮かび上がった。