「英語が得意な子」の親がしている4つの習慣Photo by Adobe Stock

新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学から心理学までさまざまな資料や取材を元に、「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー、「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を紹介する。

子どもならではの優位性を生かす

 英語を習得するにあたって、子どもには大人より優れた力があります。いいかえれば、こうした力は成長とともに失われていくものです。児童英語教育と第二言語習得にくわしい上智大学短期大学部の狩野晶子教授によると、子どもが大人より優れている力は主に次の4つだといいます。

(1)音声を敏感に聞き取る力
 子どもは音への感受性が豊かです。小さいうちのほうが聞く力に長けており、動物や虫の鳴き声を真似たり、アニメのキャラクターのモノマネをするのも上手です。

(2)音のかたまりを丸ごと処理する力
 落語の「じゅげむじゅげむ……」や、ひたすらポケモンのキャラクターの名前を151匹唱え続ける「ポケモン言えるかな?」の歌など、子どもは意味がよくわからないものでも音のかたまりとして覚えてしまいます。

(3)くりかえしに耐える力
 いつも同じ絵本を読みたがったり、気に入った動画を何度も見たり、子どもは同じことをくりかえしてやりたがります。

(4)あいまいさに耐える力
 子どもはすべてを理解できなくても平気です。あいまいな理解でも、相手の表情やまわりの状況から自分なりに文脈や意味を想像しながらやりとりを進めていくことができます。

 この4つの力のうち、児童期にとくに伸ばすべきは、英語を「聞く」力です。小学校のあいだは読み書きをかっちりさせるのではなく、意味のある英語を楽しくたくさん聞くことで英語の音に慣れさせることが大事です。英語の歌や絵本のオーディオブックを使うのもいいですし、ユーチューブやネットフリックスにも子ども向けの英語番組があります。Eテレにも、副音声で英語を聞ける子ども向け番組があります。

 子どもに英語を身につけさせてあげるにはどうすればよいでしょうか?

【その1】毎日、英語に楽しく触れさせる

 個人差は大きいですが、2000から4000時間聞くと、ある程度英語で意味が取れる聞き取りの力が育つといわれています。ところが学校で週に1回1時間程度、英語に触れても年間で35時間。3500時間聞くには約100年もかかってしまう計算になります。学校や英語教室だけに頼るよりも、毎日少しずつでも、家庭で英語を聞く機会をつくってあげることが効果的です。

 ただ、ここで気をつけたいのは、子どもが楽しんでいることが重要で、正確に聞き取れているかどうかは気にしないことです。子どもが自由に想像したり、類推したり、真似をしたりしながら、英語という言葉で遊ぶ体験をすることが大切です。

【その2】正解に導こうとしない

「間違えたらどうしよう」というプレッシャーのある状態だと、英語を使ってみようという気持ちが起こりにくく、上達をさまたげてしまいます。

 学校で習ったやりとりが正しく言えるか、きちんと理解できているかにこだわる必要はありません。むしろ、間違っていても正さないことが大事です。「言えた!」「通じた!」という成功体験が「もしかして英語できるかも!?」という自信につながり、英語を話すことへの不安感を下げていくのです。南カリフォルニア大学の言語学者、スティーヴン・クラッシェン名誉教授は「不安感が低いほど言語の習得は進む」といっています。

 赤ちゃんが母語を覚える過程でも、間違った言いまわしをすることがよくありますが、成長とともに自然と正しくなっていきます。英語を覚えるときもこれと同じです。親はあせらず、期待しすぎず、長い目でおおらかに見守ることが大切です。

【その3】好きなことを英語で掘り下げる

 狩野教授は、子どもが野球好きなら野球のポジションやルール、メジャーリーグの選手の名前など、プリンセスやハリー・ポッター好きならお城についてなど、子どもが興味をもつ世界を英語ではどう表現するのか、一緒に調べてみることを勧めています。ほかにも、魚、虫、恐竜、花など、子どもが好きなことはたくさんあります。

 たとえばグーグルで「恐竜 名前 英語」と検索すれば、さまざまな恐竜の英語名や単語カードなどが見つかります。一見、何の役に立つのかわからないような虫の名前やお城の備品の単語も、好きな子どもにとっては最高に興味深い知識です。

 好奇心をもって調べた知識は記憶に長くとどまります。そんな知識が、子どもの英語への関心の入り口になります。

【その4】親がコミュニケーションを楽しむ

 親ができることで最も手っ取り早くて効果的なのは、コミュニケーションを楽しむ「お手本」になることだと狩野教授はいいます。たとえ苦手でも、たどたどしくても、コミュニケーションを楽しむ姿勢を見せるのです。

 たとえば道で困っている外国人がいたら、日本語まじりでもいいので「お手伝いしましょうか」と話しかけてみます。言葉が違う相手にもコミュニケーションの意欲を示すことに大きな教育効果があるのだそうです。子どもは「間違ってもいい、伝わればいいんだ」と知ることで、「英語を使ってみようかな」という次のステップに進んでいけます。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)

取材協力
上智大学短期大学部英語科教授、狩野晶子氏