賢人100人に聞く!日本の未来#37

2018年、中国で誕生した「ゲノム編集ベビー」が波紋を広げたことは記憶に新しい。また、今年のノーベル化学賞には「ゲノム編集」の新技術を開発した米仏の2氏が選ばれるなど、すでに生活の一部に浸透し始めているさまざまなゲノム技術。一方で、正しく使えば有益だが、“未知”の技術に対する理解不足も課題となっている。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#37では、遺伝子解析サービスを手掛けるベンチャー、ジーンクエストの高橋祥子代表にゲノム技術の未来について聞いた。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

遺伝子解析ベンチャーの代表が
ゲノムビジネス最前線を明かす

――「ゲノム解析」「ゲノム編集」といった遺伝子関連の技術が注目を集めています。

 さまざまな分野に影響を与えますが、最初に利用が進むのは医療、ヘルスケアの分野でしょう。特に、ゲノム解析については非常に進んでいて、2003年にヒトゲノムが解読されて以来、この17年でゲノムの解析コストは大きく下がり、蓄積されていくデータをどのように活用するかが重要になっています。

 注目されているのは「個別化ソリューション」。例えば医療では、がん治療のときに遺伝子を調べてから、その人に最適な治療法を提供するといったことが行われ始めています。また、今は「健康寿命」が社会的に重視されていますが、そのためには病気の予防が大切。ゲノム解析によって疾患のリスクを事前に知ることで、病気の予防に生かすこともできます。

 がん領域だけではなく、認知症や精神疾患などの他の疾患に加えて、医療以外の分野では食品や栄養サプリメント、ダイエット、運動、睡眠といった、ヘルスケアに関係するあらゆるところで利用され始めています。

 これまで医療においては、医療従事者と患者の間にある情報の非対称性が一つの課題でした。具体的に言えば、病気を本人に告知するかどうか決めるのは医者側であるといったように、医療従事者側が病状などについて詳しい一方、患者側には情報が少ない状況が続いてきました。

 ですが、個人が自分のゲノム情報を把握できるようになると、その情報の非対称性は解消されていきます。ゲノム解析が普及しつつある中で、個人が自分の情報を知らずにいることはもはやできません。自分の身体の情報を知った上で、どう予防や適切な治療に生かすかを考えるタイミングに来ています。

 ただ、一方でゲノム情報の利用が広がることで生じるリスクも指摘されています。