可愛がっていた後輩の政治家の方たちとお目にかかったという話をすると、「手土産は持ってきたか?ハイヤーの運転手に食事代を出していたか?」と必ず聞き、本人に注意していたようです。
「君たちには人間の心があるのか」
忘れられない野中氏の叱責
一方、地下鉄サリン事件では国家公安委員長として、事態の収拾にあたっています。
地下鉄サリン事件やオウム真理教被害者への給付金制度が決まったとき、何らかの理由で、全額保障できない人がいるという報告があったそうです。そのとき野中氏は爆発。「君たちには人間の心があるのか」と叱責し、全額保障を実現させました。
翻って、コロナ騒動の際、安倍政権は営業自粛で損をする人、休業で職を失った人をはじめ、とにかくおカネを出すことを渋りました。「国民の心がわかるという政治家がいなくなった」と、心から思います。
彼が引退してからのこんな話が好きです。
京都のマンションの近くを毎日散歩するのですが、いつもホームレスと会話していたのだそうです。ある日、あるホームレスに、「いつまでもホームレスをやっているな」と説教して、故郷に帰るための資金をあげた。「その日から公園にきていない。やっと故郷に帰ったんだろう」と、自分のことのように喜んでおられました。
喉元まで「先生、たぶんその5万円で美味しいものでも食べて、他の公園に移っているだけですよ」と言いたくなるのですが、あの笑顔の前では言えません。
選挙民との一対一の本当の交流の上に政治がある。これが民主主義の原点ですが、1人区に慣れ、選挙区がなく東京で育った世襲政治家には、このあたりが全然わかっていないのだと思います。