将来世代に未来を残すために今できること

「食のC2C」ポケットマルシェに、オレンジページと丸井グループが出資した革新的な理由高橋博之(たかはし・ひろゆき)
株式会社ポケットマルシェ代表取締役CEO
『東北食べる通信』創刊編集長
1974年、岩手県花巻市生まれ。岩手県議会議員を2期務め、2011年9月巨大防潮堤建設へ異を唱えて岩手県知事選に出馬するも次点で落選し、政界引退。2013年、NPO法人東北開墾を立ち上げ、世界初の食べ物付き情報誌『東北食べる通信』を創刊し、編集長に就任。2014年、一般社団法人「日本食べる通信リーグ」を創設し、同モデルを日本全国、台湾の50地域へ展開。2016年、生産者と消費者を直接つなぐスマホアプリ「ポケットマルシェ」を開始。「関係人口」の提唱者としても知られている。

高橋「人類は分かれ道に立っている」と、丸井さんの「共創経営レポート」にありましたけど、僕も気候危機の問題に強い危機感を持っています。人為的な理由による温室効果ガスの排出量の21~37%は、世界のフードシステムが占めています。僕たちは1キロカロリー摂取するために、10キロカロリーのエネルギーのムダ遣いをしていると言われています。それを解決するには、なるべく近場の知っている生産者から旬の食材を買って、余すことなくいただくこと。まさに僕たちのプラットフォームが「食」の無駄を省き、温室効果ガスを減らす取り組みにつながります。ポケットマルシェのユーザーからは、「食べものを捨てられなくなった」という声をよく聞きます。生産者と直接コミュニケーションを交わしたら、捨てられなくなるんですね。顔が見えるとお互いに支え合う。ポケマルでは、生産者も消費者も「とにかく楽しい」というんですよね。僕たちの事業そのものがウェルビーイングにつながると思っています。オレンジページさんは、「幸福の追求」や「持続可能な社会」に向けてどんな取り組みをされていますか?

一木「食」にまつわるライフスタイルは、社会課題の解決や生活者のウェルビーイングを高める重要なカギとなっています。オレンジページの場合、それを「啓蒙」ではなく、生活者がワクワクして取り組めるように、編集力で発信している点が強みだと思います

「イエナカ」に対する読者の関心は高いですね。生産者とのコミュニケーションを介して直接購入した食材を自宅で料理すると、こんなに楽しくておいしくて、日々の暮らしを豊かにするんだということを、オレンジページの誌面、リアルイベント、旅といった多様な媒体と編集力で伝えていけたらいいなと。高橋さんのビジョンの実現や、ソーシャルインパクトにも貢献できると思うんです。持続可能な社会につなぐためには、フードロスを出さない、プラスチックごみを減らす、生ごみを捨てないで循環させるなど、いろんな取り組みがあります。それをいかに楽しいライフスタイルとして伝えるか? 何よりもフードロスを出さないためには、おいしく料理して頂き、残さないこと。オレンジページのレシピは「おいしさ」をはずさないと自負しています。

高橋社会課題の敷居をオレンジページさんの編集力で下げる。北風じゃなくて、太陽になるということですね。丸井さんの取り組みはいかがですか?

青井私たちは持続可能性や幸せについて、6つのステークホルダーから考えています。それはお客様、株主・投資家、お取引先様、地域・社会、社員、そして、将来世代の子どもたちです。すべてのステークホルダーの幸せが重なり、調和するところをつくっていく。それが僕らの企業価値の定義です

 これから一番力を入れたいのは、将来世代と一緒に持続可能な社会や、ウェルビーイングを実現すること。ポケットマルシェもそういう取り組みをできる「場」となるでしょう。ほかにも、「アイカサ」という傘のシェアリングサービスを活用することで、脱プラスチック問題を考えたり、「みんな電力」とコラボして顔の見える再生可能エネルギーの取り組みを始めたりしています。当社のクレジットカード会員へのアンケートによると、約6割のお客様が再生エネルギーを使いたいそうです。この層に働きかけて、消費者から「脱CO2」や再生エネルギーの動きが盛り上がるような活動やビジネスを進めていきたいと思います。