アベノミクス#2Photo by Toshiaki Usami

官邸が望んだアベノミクス景気の「戦後最長」は幻に終わった。景気動向指数研究会の会長でマクロ経済学者の吉川洋・立正大学学長は、「機械的な基準で判断すれば、2018年10月が景気の山だったことは疑う余地がない」と話す。経済政策も「円安一本足打法で、企業が一息ついたことは確かだが、生産性の低さなど日本経済の本当の課題は残った」という。特集『アベノミクス 継承に値するのか』の#2では、今回の景気拡張を支えたアベノミクスはどういう政策だったのか、「ポストアベノミクス」の経済政策はどういう方向に向かうのかを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

景気は機械的な基準で判断
負けて「ルールが悪い」は通らない

――安倍政権下での景気拡大期間は5年11カ月で、「戦後2番目」の長さということになりました。

 第2次安倍政権は2012年12月に誕生したが、1カ月前の11月が景気の谷でそれ以降は景気の拡張期に入った。民主党政権時代の超円高の流れも変わり始めていた。その意味では運のいい政権だったといえる。

 政府は「戦後最長」を期待していたようだが、景気動向指数に基づく判断は、鉱工業生産指数など、ヒストリカルDI(ディフュージョンインデックス)を構成する指標の動きによって、機械的な基準で判断することが「売り」だ。

 景気動向指数研究会の委員の間で18年10月を景気の山とすることには全く異論はなかった。民間のエコノミストの多くはもっと前からそう判断していた。景気動向指数研究会の招集自体も遅過ぎたぐらいだ。

――政府側は不満のようです。